何故今こんな話をしなければならないかわかりますか?
「朝か……」
昨日、あれからまた占いの城に行って……。
いろいろと学んで、俺の占い力はさらに磨きがかかったんだよな。
流れでまたこの宿屋に泊まったわけだけど。
……もうここは立派な宿屋だよ。掃除も行き届いているし。
俺の洋服も綺麗に洗濯されていた。
ここは立派な宿屋だと……認めざるをえないですよ、ミルさん。
「さて、今日の朝ごはんは何かな?」
クロアは部屋を出て、ゆっくりと階段を下りた。
◇
「今日は美味しそうなパンを作ってみました。それから、シチューをどうぞ」
「はい……」
まさかこのパン……自作か?
しかし……何だろうこの違和感は。昨日のあの時からかな。
少し……いや、より一層ミルさんは俺に対してよそよそしくなった気がする。
ここまでの変化を起こす理由が、昨日のあの話にあったのだろうか。
「……今日は、また別館に行くんですよね?メーティス様に会いに」
「そうですね。どうやら言われた通り占い力も上がったみたいなので。
食べた終わったらすぐにでも向かいましょうか。ミアちゃんの居場所も聞かないといけないですし」
「では外に出る用意をしなくては。今日も時給分は働かせてもらいますよ」
「ですね……」
……それにしてもミルさんは料理もうまいな。
◇
二人はそれから昨日と同じように協会の別館へと向かった。
そして同様の行動をして、あの場所であの人との会話が始まった。
「メーティスさん、こんにちは。言われた通り、能力をうまく使い運命を変更してきましたよ」
「じゃあ力が上がったことでしょうね、見せてください」
「では、いつでもどうぞ」
……俺の黒☆ガードは発動していない。
まだメーティスさんよりも、俺には力が足りていないということか。
「……そうですね。中々良い感じです」
「あの、言われたことをやってきたんで、俺の言うことも聞いてもらえますか?」
「いいでしょう。どうやら目的の力はもう得れそうな状況なので」
「人探しと……あとは……」
「わかっていますよ。クロアさんの護衛の方ですよね?」
「わかってるなら話が早いです。ミルさんの能力はもう元に戻らないんでしょうか?」
「……その前にまずは人探しからです。
このアイテムの力をもってすれば簡単にわかるはずです」
メーティスはキラキラと光り輝く水晶玉を取り出した。
「それは?」
「市販の物より、強い力を持っている水晶玉です」
「それなら、居場所がわかりそうですね」
「……ところでどなたを?」
「それもわかっているのでは?」
「さあ?そこまでは……。大体の目星はついていますが」
なるほど……?
「中級赤占い師のミアさん、わかりますよね?」
「もちろん存じておりますよ。では……」
この人は一体どこまで情報を握っているのだろう。
◇
「……やはり黒い霧がかかっていますね」
「そうですね、前に見た時もこれのせいで見れなかったんですよね」
「つまりそういうことです。私の力を持ってしても、見えないんです。わかりました?」
うんうん。え?
「……ではどうすれば?」
「見えないことは仕方ないのですが。
この黒い霧は先ほどの二つ目の問いに関係していますよ」
「まさか、ミルさんが能力を奪われたことに関係しているんですか?」
「そうです。ミルさんの能力、それは能力で治すことができるはずです」
「え?」
「わかりませんか?治すことができるその能力を」
「奪われた能力を?」
能力を奪えるのは黒☆チェンジのはずだが?
それを治せる能力があっただろうか……。
「……仕方ないですね。今が話すべき時かもしれません。白☆チェンジで治せるんです」
「え、白☆チェンジで治せるんですか?」
「そうですよ。白☆チェンジはとても万能な能力なんです。
だからこの世界では、みんな白の神官に憧れてそれを最終目標としているのです。
ここ明国の神官のほとんどが白の神官なのも、その能力があるがためです」
「なるほど」
「ひとつ、説明が必要かもしれません。
とても重要なことです。ですが誰にも言ってはいけませんよ」
「はい……」
口止めはきついが……重要そうだし、ここは聞くしかないか。
「黒の能力は全部で4つある。ご存じですか?」
「まあ……」
黒の書のことはしっかりと頭に入っている。
「それと対になる白の能力も全部で4つあるんです」
「……そうだったんですか」
白の能力も4つ……。
「その全てを今教えましょう。能力は互いに影響しあっているのです。
基本は強い力のほうが勝ち、対になる能力を打ち消すことができます」
クロアは対になる能力を聞いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
白☆チェンジ⇔黒☆黒い炎
白☆未来予知⇔黒☆ガード
白☆ホワイトホール⇔黒☆ブラックホール
白☆シーズン⇔黒☆チェンジ
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
◇
「……そういうことだったんですか」
通りで俺が白☆未来予知を黒☆ガードしたり、
俺の黒☆黒い炎をビアさんの白☆チェンジで抑えたりすることができたわけだ。
「白☆ホワイトホールという能力はまさか?」
「そうですね、簡単に言うとクロアさんが元の世界に帰ることができる能力です」
「なるほど……」
ビアさんが持っているというあの能力だったか……。
◇
「じゃあ早速やってみてもらいましょうか、白☆チェンジを。
今話したことを理解したならばわかったでしょう?原因が」
「黒☆黒い炎が原因……?」
「その通りです……では外にいるミルさんをここに連れてきてください。話もありますし」
「ミルさんを……?」
「とにかく話は、それからです」
この流れ……。どうにも主導権は相手が握るらしいな……。
◇
クロアは許可を取り、ミルを外から連れてきた。
「お初にお目にかかります、白の神官メーティス様。
その崇高なお噂は国中で広がっていますわ」
「ありがとう」
二人は深く挨拶を交わした。
「あの……わざわざミルさんを連れてくる必要はあったんですか?」
「白☆チェンジは相手が近くにいればいるほど力を発揮できる。
知りませんでしたか?」
「えっと……」
いや、普通に知りませんでしたけど。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
白☆チェンジ
対象者一人の運勢を変える。力が大きいほど思った通りに変えられる。
相手が近くにいればいるほど力を発揮できる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「でも今はそんなことではなくて……ミルさんに話があるのです」
「……何か私にお話が?」
メーティスさんがミルさんに話とは、一体何だろう……?
◇
「……早速ですが私は今、組織に与しています」
「……そうなのですね」
ここでズバリと言っちゃうんだ。
「協会の神官は、みな好き勝手に能力を使って運勢を変化させているのです。
そしてそれは誰かに指摘されなければわからない。
だから一般人は支配されているも同然。人々は操られているのと同じなのです」
「……」
……やっぱりそうなんだ。俺も誰かから支配されてんのかな?
ガードの能力を上回る力で。
……だからエルクさんが言っていたように、俺は自由ではない。
裏から能力で相手の思うような運勢に仕組まれているってことか?
だから抗える方法は、力を上げてガードの能力を発動することなわけか。
……ボスが言っていたように。
でもさっきの話を聞く限り、白☆チェンジに対抗するには、黒☆黒い炎が……。
「……ミルさん、わからない?」
「わかりませんね。力を持つものが支配するのは昔から当然のことですよ。
それが協会の神官であれ誰であれ。お金を持つ者が店を支配するのと何ら変わりありません」
「……」
何だか話が壮大になってきたな。俺はそんなこと割とどうでもいいんだけど。
運命がどうとか、力が支配とか。もう、なるようになるだろ。
俺はボスをエルクさんに会わせて、日本に帰るだけで満足だったんだが?
どうしてこうも事態は複雑化していくのか。何だか今更引くに引けない状況になってきたし。
「クロアさん?何故今こんな話をしなければならないかわかりますか?」