この三点に気を付ければ、力を最大限に発揮できるんだよな
◇
「話は無事に終わったんですか?」
「まあ、そうですね。手っ取り早く占い力を上げる方法はわかりました。
アイテムを身に着けて、能力をうまく使うだけでいいらしいです」
クロアはメーティスに貰ったブラックオニキスをミルに見せた。
「それは……とても神秘的なアイテムですね。
やはり神官メーティス様はすごいお力をお持ちのようで」
「まあ、力は感じましたよ。でもこの国の神官はみんなあんな感じなんですか?」
「あんな感じ、とは?」
「真面目で堅苦しい感じ?……というか」
「さあ、それは人それぞれではないですか?
私も直接会ったことはないのでよくは知りませんが」
「……そう言えば、ミアちゃんの居場所を聞くことを忘れてました。
一方的に話をされて終わりましたよ」
「それは仕方ないかもしれませんね。
上からの命令を聞くのが、ここでは当たり前なので。
でも同じ神官ならば普通は対等な立場のはずですが……」
どうやらここは徹底的に縦社会のようだな……。
「……また明日会うことになるらしいので、明日こそは聞いてみますよ」
それからクロアとミルは話をしながら、メーティスに言われた通りの場所に赴いた。
◇
町の外れに位置する、人通りの少ない場所で二人は物陰に隠れていた。
「……それで、話によるとこの辺に来るということですね」
本当にここに現れるのだろうか。
「10番目の神官……」
明国の実力10位の白の神官コニィ・トレホン。
実力はあるのだが、せっかちな性格が順位に災いしているらしい。
この先にある建物に運勢が悪くなった集団が屯している。
そこで神官コニィが能力を使い、複数の人間の運勢を一斉に良くして集団の崩壊を目指すらしい。
……この能力は対象者に近づかないと使えないという、大きなデメリットがある。
だからわざわざコニィはここにやって来るんだよな。
そこで能力を使われる前に、俺の能力でコニィの運命を変えるわけだ。
俺の力を上げるためとはいえ、その運命を変えてしまって大丈夫なんだろうか。
どう考えてもこれが成功すれば組織に利があるのは、間違いなさそうだが。
「……本当に神官コニィに俺の能力が通用するんですかね。不安になってきました」
「きっと効果がありますよ。それが今求められていることなんです。
メーティス様のお話を信じましょう」
やっぱり実力が上の神官の言うことのほうが、正しいと思うんだな。
「……来ました!あれが神官コニィですね」
ミルは見つからないよう、小さな声で呟いた。
なるほど、確かに白の神官だ。言われた通りの風貌をしている。
「じゃあ、能力をつかってと……」
えっと……メーティスさんに能力の説明を聞いたんだよな。
赤の能力、刹那……。
複数の人間の運命が絡み合う場合のデメリットを、いかにうまく無くすか。
そして相手を直接目視で捉えて使うことができれば、効果の有無がすぐにわかる。
力が無い内は、実行しやすい簡単な運命に変えるのがコツなんだ。
この三点に気を付ければ、力を最大限に発揮できるんだよな。
よし……。神官コニィ一人に対して直接見ながら能力を使う。
あの人に予知能力が無ければ、これはできない芸当だな。
メーティスさん、今のところは言うことを聞くしかないけど……実力は確からしい。
白の神官コニィは、この場所から早々に立ち去る。
白の神官コニィは、この場所から早々に立ち去る。
クロアはできる限り念じて、赤☆刹那の能力を発動した。
「……これで良いのだろうか」
いまいち実感がないが。
「メーティス様が言われたのですから、間違いはないはずです」
その後、クロアの目視の能力にすぐに効果が表れた。
なるほど……青☆目視にはまだ隠された能力があったか。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
青☆目視
対象者一人の占いの力の程度を見破る。対象者一人が現在受けている能力を把握できる。
自分を基準に相手の力量を把握する。力があるほど正確にわかる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
◇
数分後、神官コニィはその場から姿を消した。
青☆凝視で常に監視していたが、能力は使っていなかったようだ。
……どうやら運命の変更はうまくいったようだな。
これで良かったのかはわからないが……。
俺の占い力が伸びたことはひしひしと感じる。
「……去っていきましたが」
「何とか運命の変更は無事に済みましたよ」
「それでは能力が効いたんですね?神官様相手に通用するとは……」
◇
「ところで、これからどうするんですか?まだ何か命令があったのですか?」
「……それは、もう無いんですけど。ミルさんに少し聞きたいことが。
今朝の組織の話についての続きなんですけど……。
組織が何の為にあんなことをしているか知っていますか?」
「……正直、知りたくもないですね」
「じゃあ協会が実質、運勢を管理していることについては?……どう思ってますか?」
「それが普通ですし、皆の運勢が良くなるのなら良いんじゃないんですか?
誰だってお金持ちになりたいと思うでしょう?」
「でもそれは、勝手だと思いませんか?」
「クロアは知らないからですね。シークスフィアに通えば教えてくれるんですよ。
何故占い師を統括する制度ができたのかを」
「じゃあ、それを教えてくださいよ」
それからクロアはミルから協会の制度についてを聞いた。
簡単に纏めると、とても大きな運命によってこういう制度ができた……ということだった。
それは簡単に変えられるものでもなく、大きな強制力を持っているらしい。
◇
「確かに協会の制度についてはわかりました。
でも……。例えば神官は白の能力、チェンジで人の運勢を良くすることも悪くすることもできる。
その人の気分次第で相手を思うがままにですよ?それは人の運勢を掌握していることに他なりませんか?」
「……確かにそういう考え方も、あるかもしれませんね」
「俺なんかビアさんに、マグマやら何やら障害がある悪い運勢をつけられたんですから」
「そうなんですか……?本当にそんなことを?」
「間違いないです。実際にあの運勢を自分で変えてきたんですから」
「それは何故でしょうかね?恐らく、何か考えがあっての事だと思いますけど」
あの時は深く考えてなかったけど、今思えば俺を抑えたかったということか?
俺が黒の炎の能力を使うと知っていたから?でも最初にあった時は確か……。
「ところでここまで組織の事を尋ねるということは、クロアさんは組織に何か関わりでもあるんですか?」
「そうですね、一緒に行動していたらいずればれると思いますし……」
クロアはミルに簡単に組織との経緯を説明した。
◇
「……だから、俺は組織には入ってないんですけど、その考えはわかるんですよ」
「……そうですか」
「この、俺の考えはわかりませんか?」
「わからないこともないですが、私の考えは変わることはありませんね。
私にとっては協会が絶対的に正義なんです」
「そこまで信頼するのは……何か、あったんですか?」
「……私の両親が運勢を悪くして貧乏になった。
それを協会が救ってくれた。……ただそれだけのことです」
「そうだったんですか。それってミアちゃんが話していた、あの件にも関係が?」
「そうですね。それも協会がしてくれたありがたいことの一つです。
でも、もうこの話は終わりましょう。クロアさんの考えはわかりましたので」




