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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第七章 青い世界編
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占い師の相談対応マニュアルの事を思い出して

「……さすがにやめておきましょう」


「え?なんで?」


「どう考えても余計ややこしくなるでしょう?」


「そう……?」


「わかりました……」


「え?」


「じゃあ俺が兄で」


「いや、それもおかしいでしょ」


「そうですか?」


「じゃあ遠い親戚で……」


「もういいよ、普通に仲が良い仕事仲間ってことにするから」


 じゃあ最初からそれで良かったんじゃ……?



 その後クロア達は何とかうまく説明をして、二人を納得させた。

 そして二人は少し雑談をした後、仕事に戻っていった。


「いい?今日はここで相談を受けて、たくさん悩みを解決して少しでも占い力を上げるんだよ?」


「そうですね……」

 今日は相談受付するのか。面倒だなあ。


「それを上からきつく命令されてるの」


「そうなの?」

 それ別に言わなくてもいいよね?俺に圧力かけてるよね?


「……そう言えばね、風国にはたくさんの占い師がいるんだよ。

そうだね、今の功国の10倍はいると思うよ」


「へえ、そんなにいるんだ」


「でも神官は一桁しかいないけどね」


「風国の神官……。青の能力のエキスパートかな」



 そしてクロアの本日の仕事が始まった。


「……あの、今日は特別に神官さんに相談ができると聞いてやってまいりました」


「そうですね。良い時に来られましたね」


 えーっと、占い師の相談対応マニュアルの事を思い出してと……。


 まずは相手の容姿を確認しながら、挨拶をしなくては。


「よろしくお願いします。クロアです」


 クロアは丁寧にお辞儀をして、相手をよく観察した。

 相手も軽く会釈した。


 この街に住んでいる青年かな?笑顔も無く、顔が引きつっている。人相はあまり良くないようだ。

 身なりを見るに、この辺りで見る一般的な格好だな。


 そしてまずは悩みを聞く。


「では本日はどうかされましたか?」


 何だか俺、医者みたいだが。


「いや……。ここのところ運勢が本当に良くなくって……。

ところで、この辺では見かけない神官様のようですが」


「……今日だけ特別なんで。でもこれは神官の正式なバッジなんですよ」

 そういうとクロアは、自分の胸についている白く輝くバッジを指さした。


「それは、まぎれもなく白の神官の証ですね……。疑ってすみませんでした」


「はい、問題ないですよ……」


 できればここで笑顔がしたいが、

 さすがにまだミルさんのように自然な営業スマイルはできない。


「白属性なので、どの方法でも占えます。どの色の占いで占ってほしいですか?」


「あの、できればすぐにでもチェンジを使っていただきたい。最近の運勢がすごく悪いのです」


「そうなんですか、それでは……」


 なんだ、チェンジを使うだけの簡単なお仕事か。


 クロアは強く念じながら、能力を発動した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白☆チェンジ

 対象者一人の運勢を変える。力が大きいほど思った通りに変えられる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ありがとうございます。神官様のお力を確かに感じました。占ってもらえて本当によかった」


「それは、良かったですね」

 チェンジの能力を使われたら、一般人はわかるものなのだろうか?


「これは、今回の謝礼金です。どうぞお受け取りください」


 クロアの目の前の机には、重みのある札束が入った封筒が置かれた。


 そんなにくれるんだ……。それにしてもこれは簡単すぎるお仕事だなあ。


「どうもありがとうございました。それではお大事に」


 ふう……。どうやら俺は医者だったようだな……?


 その後もクロアはマニュアル通りに業務をこなしていった。



「……ようやくお仕事が終わったね。クロアすごい頑張ってたよね」


「何とかお客さん全員の悩みを解決できましたね」


「とっても捗ったよ」


「それは良かったです、少し疲れましたけど」


「じゃあ今日は……。一緒に食事でも食べて……」


 その時一人の少年がクロア達の元にやってきた。


「……あの、白の神官のクロア様」


「あれ?君は確かエミールだっけ?」


「はい、そうです。覚えていただき光栄です。

先ほど白の能力のチェンジを使われていたと聞いて……」


「そうだね」


「その……できれば自分にも使って頂けると」


「そうなの?どうしようかな……?」


 うーん、上の立場とは実に気分が良いものだね。


「あー、そんなのずるいよ。クロア、まずは私に能力を使って?お金は払うから」


「えー?青いお姉さんもなの?」


 その時、一人の少女もクロア達の元にやってきた。


「失礼ですが、わたしもよろしいですか?」


「えっ、レナーテちゃんも?」


「この国には今、白の神官は存在しないの。

だから白☆チェンジの能力はものすごく貴重なんだよ。

みんな運勢を良くしたいと願っているの。わかるでしょ?」


「そんなこと言われてもね……。さてどうしようかな……」


 いや、本当にどうしよう。

 三人に能力を使えるほどの気力は残ってないし……。

 ここで俺が一人を選んでも、公平じゃないし……。他の二人からの反発が……。


「……じゃあ疲れてるから、一人だけね」


「本当ですか?でも一番先に言ったのは僕ですけど」


「じゃあその一人は、もちろんわたしだよね?」


「運勢を変えられた占い師は、必ずその恩返しをするらしいですよ」


 うん、レナーテちゃんだけ何かおかしい。


「……そうだね、では何かで三人で勝負でもしてよ。

勝った一人に能力を使ってあげることにするよ」


 俺、高みの見物。


「……じゃあ何で勝負する?」


「そうだなあ」


「うーん……」


「じゃあ、じゃんけんにしよ」


 ここでまさかのじゃんけんとは。


「何故ですか?」


「何も道具がいらなくて、すぐに決着が着くからだよ」


「そうですね、僕たちも疲れていますし」


「後出しと、能力は禁止だよ、用意はいい?」


「じゃんけん……!」




「あ、レナちゃんの負けだね。じゃあエミ君、これから私との一騎打ちだね」


 リンは気合を入れるポーズをとった。


「こういう重要な局面では祈りを捧げなければ……」


 エミールは祈りを捧げるポーズをとった。


「あ、ダメだよ?そんなことを言って、能力を使ったら……」


「……あの、ちょっと待ってください。運勢が悪かったら負けるのに、

運勢が良い人が勝ってさらに運勢が良くなるのは不公平じゃないですか?」


「……うーん、それは確かにそうかも?」



 レナーテの一言により、三人は急遽話し合いを始めた。

 そして数分後、結論が出た。


「……じゃあ運勢が一番悪かったレナーテちゃんに能力を使ってあげるので良いんだね?

みんなはそれで納得?」


「……仕方ないですね」


「残念だけど、一番運勢が悪いのは可哀そうだもんね。

また能力を使ってもらえる機会はあるんだろうし」


「……そうですよね、やっぱり僕はお金を貯めて正式に依頼することにします」


「エミ君は偉いね」


「へへ……」


 何だか知らない間に良い話に落ち着いたな。



「じゃあ能力を発動するね」


「はい……。お願いします」


「別に目を閉じなくてもいいんだよ?」


 クロアは強く念じながら、能力を発動した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白☆チェンジ

 対象者一人の運勢を変える。力が大きいほど思った通りに変えられる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 そしてクロア達は二人と別れた。


「何だかうまく話が纏まって良かったね」


「そうだね、一時はどうなることかと思ったけど」


「じゃあ、明日はロルドが帰ってくるからさ。

今日は……一緒に食事でも食べてさ……」


「では今日は宿屋で一人ゆっくり休んで、朝一に家に行かせてもらいますね。

それでは俺はこれで。お仕事お疲れさまでした」


「え?」

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