ドキドキの採寸イベント。布が焦げちゃうほどの極限スキンシップ!?
ドキドキの採寸イベント。布が焦げちゃうほどの極限スキンシップ!?
「それではギデオン様! いよいよ『最高の礼服』を作るための、全身の採寸を行いたいと思います!」
ポポロ・コーポのリビング。
私がメジャーを首から下げてビシッと宣言すると、ギデオン様はゴクリと喉を鳴らして、コクリと真面目に頷いた。
キュララちゃんとリーザちゃんの『過激な素材集め配信』のおかげで、激レア素材を買うための資金は順調すぎるほどに集まっている。
いざ素材が手に入った時、すぐに仕立てに取り掛かれるよう、彼の正確な身体のサイズを測っておく必要があるのだ。
「正確な数値を測りたいので、上に羽織っているコートとスウェットは脱いでいただけますか?」
「あ、ああ。分かった」
ギデオン様は少し緊張した面持ちで、私が作った漆黒のコートとスウェットを脱いだ。
現れたのは、これまた私が急ごしらえで作った、薄手のインナーシャツ一枚の姿だ。
「(……うわぁ)」
私は思わず、見惚れるように息を呑んでしまった。
薄い生地越しでもはっきりと分かる、過酷な鍛錬によって培われた分厚い胸板。
広い肩幅から、キュッと引き締まった腰へと続く逆三角形の完璧なシルエット。
長年、重くて硬い黒鎧を着続けていたからだろうか。彼の体には無駄な脂肪が一切なく、しなやかな野生の豹のような美しさがあった。
「あの……リゼット? そ、そんなに見つめられると……その……」
ギデオン様が恥ずかしそうに視線を逸らし、頬を赤く染める。
屈強な体格と、超絶美形な顔立ち。それでいて中身はピュアなワンコ系というギャップは、私の心臓にかなり悪い。
「あ、すみません! 服を作る者として、つい骨格や筋肉の付き方に見入ってしまって! さ、さっそく測っていきますね!」
私は慌ててパタンナーとしてのプロ意識を呼び起こし、メジャーを手にした。
「まずは肩幅から測りますね。少し失礼します」
私は彼の背後に回り、肩の端から端へとメジャーを当てた。
「(……ひろっ! それに、筋肉がすっごく硬い……!)」
指先が布越しに彼の肩に触れた瞬間、ビクゥッ!とギデオン様の肩が大きく跳ねた。
「ギ、ギデオン様? 痛かったですか?」
「い、いや! 違うんだ。君の……君の手の感触が、あまりにも……」
「感触?」
「あ、いや、なんでもない! 続けてくれ!」
彼は必死に前を向いたまま、両手をグーに握りしめて直立不動の姿勢をとっている。
(もしかして、人に触れられることにまだ慣れてないのかな……?)
数十年間、誰にも触れられずに生きてきた彼だ。無理もない。
私はなるべく刺激しないように、そっと優しく手早く測っていくことにした。
首回り、袖丈、裄丈と順番に数値をメモしていく。
「次は胸囲を測りますね。ちょっと前を通しますよ」
私は彼の正面に回り込み、両手を伸ばして、彼の分厚い背中へメジャーを回した。
必然的に、彼を正面からハグするような、超密着した姿勢になる。
トンッ、と私の胸先が彼のインナーシャツに触れ、私の顔のすぐ横に、ギデオン様の整った鎖骨がくる。
彼から漂う、石鹸の清潔な香りと、微かな熱。
「あ……」
あまりの距離の近さに、私自身の顔もカァッと熱くなるのを感じた。
ギデオン様はといえば、私以上に限界を迎えていた。
「ギ、ギデオン様……あの、息、止まってますよ?」
「……っ! す、すまない。息を吐いたら、君の髪を揺らしてしまうかもしれないと……それに、心臓の音がうるさくて、君に迷惑をかけるんじゃないかと……」
彼の胸元からは、ドッドッドッドッ!という、早鐘のような激しい心音がはっきりと伝わってくる。
彼も私と同じように、いや、それ以上に緊張してくれているのだ。
それが分かると、恥ずかしいけれど、なんだかとても嬉しくなった。
「大丈夫ですよ。ほら、深呼吸して……」
私が微笑みながら、背中に回したメジャーをキュッと引き絞ろうとした、その時だった。
――チリッ。
焦げ臭い匂いが、ふわりと鼻を突いた。
「えっ?」
見ると、ギデオン様の背中に回していた私の腕――その袖口の布が、ほんのりと茶色く変色し、熱を帯びていたのだ。
「しまった……っ!!」
ギデオン様が血相を変え、私からバッと飛びのいた。
「ごめん、リゼット! 俺が……俺の感情が昂ぶりすぎて、呪いの出力が上がってしまった! 君の作ってくれたインナーシャツだけでは、抑えきれずに……君の袖を、焦がして……っ」
彼は自分の両手を恐怖に満ちた目で見つめ、ガタガタと震え始めた。
私の袖は少し焦げただけで、肌には全く火傷も怪我もない。
だが、彼にとって「愛する人を自分の呪いで傷つけてしまうかもしれない」という事実は、耐え難い恐怖なのだ。
「俺は……やはり、君に触れてはいけない化け物だ。君をこんなにも抱きしめたいのに、触れれば君の服を焼き、君を傷つけてしまう……っ」
悲痛な声で顔を覆うギデオン様。
彼の抱える『タッチ飢餓』――触れ合いたいのに触れられないという絶望的な焦燥感が、痛いほどに伝わってくる。
今、私が着ているただの布(タローマン製)では、これ以上接近すれば私の服は焼け落ちてしまう。
(ううん、違う。悪いのはギデオン様じゃない)
私は、焦げた袖口を全く気にすることなく、一歩前に出た。
「ギデオン様」
私が真っ直ぐに彼の紅玉の瞳を見つめると、彼はハッとして顔を上げた。
「私の服飾の腕が、まだまだ未熟なだけです」
「リゼット……?」
「今の布じゃ、ギデオン様の強すぎる熱(思い)を受け止めきれない。それなら、私がもっと強くて、もっと優しくて、絶対に焦げない最高の服を作ればいいだけのことです」
私は自分の胸に手を当てて、満面の笑みで宣言した。
「約束します。私が絶対に、あなたが何も気にせず、力いっぱい私をハグできる『最強の礼服』を作ってみせます! だから……それまで、ハグはお預けですよ?」
私が少しイタズラっぽくウィンクすると。
「…………っ!」
ギデオン様はカァァァァッ!と顔を限界まで真っ赤に染め上げ、その場に両手をついて崩れ落ちた。
「うわぁっ!? ギデオン様、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だ……ただ、君が……あまりにも可愛すぎて、そして俺の理性が、限界を……っ」
彼から漏れ出す幸せな熱(呪い)のせいで、リビングの観葉植物が少しだけドライフラワーになりかけている。
「(……ひゅ〜。相変わらず甘々ですの)」
「(ねぇリーザ、今の公爵様の顔、配信に乗せたら赤スパチャ一万枚は堅いわよ?)」
「(ダメですの。うちのプロデューサーに殺されますの)」
いつの間にかリビングの扉の隙間から覗き見していたリーザちゃんとキュララちゃんが、ヒソヒソと実況解説をしている声が聞こえた。
無事に(?)すべての採寸を終え、完璧な型紙のデータが揃った。
「あとは……この型紙を形にするための、絶対に呪いに負けない『最強の糸』だけですね」
私が型紙を見つめて呟くと、ギデオン様は熱を帯びた瞳で静かに頷いた。
「俺の呪いを完全に防ぎ切れるとすれば……伝説に聞く『世界樹の糸』くらいだろう。だが、あれはエルフの秘宝。いくら金があっても、市場に出回るものではない」
「世界樹の糸……」
どうやって手に入れようか。
私が腕を組んで唸っていると、ポポロ・コーポの窓の外――村の広場の方から、何やらものすごい歓声と、けたたましい足音が近づいてくるのが聞こえた。
『わぁぁぁぁっ! お花が! お花がいっぱいですわ〜〜っ!!』
『ああっ、待ってくれルナ様! また村の道路が森になってしまう!』
なんだか、とてつもなくカオスなトラブルの予感がする。
私たちは顔を見合わせ、急いでアパートの外へと向かった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「触れたいのに布が焦げちゃうの、切ないけど最高にドキドキする……!」
「ハグはお預け宣言、リゼットちゃん小悪魔すぎるw」
「公爵様、限界突破でオーバーヒートww」
と少しでも胸キュンしていただけましたら、
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次回、ついにアナステシア世界が誇る歩く市場破壊兵器(超絶天然エルフ)がポポロ村に降臨!?
激レア素材『世界樹の糸』を巡る、予想外すぎる物々交換の結末とは……!
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