最強の素材集めバウンティハンター、爆誕
最強の素材集めバウンティハンター、爆誕
「聞こえましたわよ、リゼットさん!! リゼットさんが服を作ってくださるなら、わたくしたちが世界中の富を巻き上げて、世界樹の糸でも何でも買ってきますのーーっ!!」
ポポロ・コーポの共同食堂。バンッ!と勢いよく扉を開け放ったリーザちゃんの隣には、頭の上に光る天使の輪を浮かべた金髪の美少女が立っていた。
彼女はビシッと私を指差し、自信満々な笑みを浮かべる。
「初めまして! アタシはキュララ。天使族にして、この大陸トップの登録者数を誇る『ゴッドチューバー』よ! アタシのビジネス(配信)に協力してくれない?」
「ご、ゴッドチューバー……?」
「神々が運営する動画配信サイト『ゴッドチューブ』で動画を配信して、広告収入や投げ銭で稼ぐ最強の職業よ! アタシ、さっきのタローマンの駐車場での出来事を上空から見てたの。アンタの作った服……『絶対防御』の概念が付与されてるわよね?」
キュララちゃんの瞳は、リーザちゃんと同じようにギラギラとした「¥」マークに輝いていた。
「あの防御力をアタシの配信で使えば、絶対にバズるわ! だからアタシに、超絶可愛くて、なおかつ最強の防御力を持った衣装を作って! その代わり、公爵様の礼服に必要な激レア素材を買う資金は、アタシが配信で全部稼いできてあげる!」
なんと頼もしい提案だろう。
世界樹の糸や神話級の素材は、普通の市場には出回らないし、出たとしても莫大な金貨が必要になる。私一人のお針子仕事では、いつ集まるか分からない代物だった。
「待て」
だが、私の横でスウェットを着たギデオン様が、スッと手を上げた。
彼はルビーの瞳を細め、静かな、しかし威圧感のある声で言った。
「リゼットの夢――最高の服作りへの対価なら、俺が払う。俺はアバロンの筆頭公爵だ。世界樹の糸だろうが何だろうが、財産を投げ打ってでも用意しよう」
ギデオン様の言葉は本気だった。彼にとって、私に服を作ってもらうことは人生そのものを懸けた願いなのだ。
「ギデオン様……ありがとうございます」
私は彼に微笑みかけると、そっと首を横に振った。
「でも、ダメです。私があなたのために作る『最高の礼服』は、あなたのお金で素材を買っちゃ意味がないんです」
「どうしてだ?」
「だって、誰かのためにプレゼントする服は、作り手が自分で用意した素材で縫い上げるからこそ、愛がこもるんですよ。私はあなたに雇われる『専属お針子』ですから、あなたに恥じない最高の仕事と、最高のプレゼントをしたいんです」
私が胸を張って答えると、ギデオン様はハッと息を呑んだ。
「俺への……プレゼント……っ」
布越しに握っていた私の手が、ほんのりと熱くなる。ギデオン様の顔がまたボンッと赤くなり、彼は「ああ……すまない、俺はまた君に救われてしまった……」とポロポロと涙を流し始めた。強面なのに、本当にピュアで可愛い人だ。
「というわけだから、キュララちゃん、リーザちゃん! 私、あなたたちの衣装を作ります! 公爵様の礼服素材のために、一緒に稼いでください!」
「交渉成立ね! さっそく衣装を作ってちょうだい!」
「よろしく頼みますのーっ!」
◇ ◇ ◇
数十分後。私はポポロ・コーポのリビングにミシンを設置し、タローマンで買ってきた迷彩柄の布と黒のフリルレースを広げていた。
「キュララちゃんは天使だけどミリタリー系の武器を使うって言ってたから……タクティカル(戦術的)な要素を取り入れつつ、アイドルとしての『映え』を重視して……」
ダダダダダダダッ!!
私は完全に『ゾーン』に入っていた。【神の裁縫箱】の針と糸が宙を舞い、布地がみるみるうちに形を変えていく。
動きやすさを重視したプリーツスカートに、弾倉を収納できる機能的な黒レースのポーチ。背中の美しい白い翼を邪魔しないオープンバックのホルターネック。
(キュララちゃんがどんな無茶をしても絶対に怪我をしないように。『絶対防弾』『防爆』……そして配信画面で一番輝く『映え度MAX』の概念付与……よしっ!)
「完成! 特製『ホーリー・タクティカル・フリルドレス』です!」
「うわぁぁぁっ! すっごく可愛い!! しかも軽い! 何これ、サイコーじゃない!!」
服に袖を通したキュララちゃんは、全身鏡の前でくるくると回ってポーズを決めた。天使の輪と白い翼に、ミリタリーゴスロリのような衣装が絶妙にマッチして、とんでもなく魅力的だ。
「さぁ、鉄は熱いうちに打てよ! さっそく深夜のゲリラ配信を始めるわ! リーザ、撮影サポートよろしく!」
「任せてくださいですの! おこぼれのスパチャはしっかり回収しますの!」
強欲コンビはハイタッチを交わすと、すぐさまポポロ村の郊外にある採石場へと向かっていった。
◇ ◇ ◇
深夜の採石場。
魔導通信石と連携した浮遊カメラが、キュララちゃんを捉えている。
『こんキュラー! みんなの天使、キュララだよー! 今日は深夜のゲリラ配信に来てくれてありがとー!』
配信が始まると同時に、画面の端(私たちの手元の端末)に猛烈な勢いでコメントが滝のように流れ始めた。
【待ってた!】
【今日の衣装、いつもと違って超可愛い!!】
【天使のミリタリーとか最高かよ】
【赤スパチャ(チャリン♪)】
「ふふーん、今日の衣装は一味違うのよ。ポポロ村の『最強の専属プロデューサー・リゼットちゃん』に作ってもらった特注品なんだから!」
キュララちゃんはカメラに向かってウィンクすると、おもむろに背後から物騒な鉄の筒――ドワーフのドンガン帝国製『対戦車魔導ロケットランチャー(RPG-17)』を取り出した。
「今日はこの衣装の『防御力検証』をやっちゃうよ! みんな、瞬き厳禁だからね!」
【えっ】
【キュララちゃん何持ってんの?】
【それ戦車を木っ端微塵にするやつだよね!?】
コメント欄がざわめく中、キュララちゃんは至近距離の岩壁に向かってロケットランチャーを構えた。
いや、岩壁に撃つのはいい。問題は、彼女の立ち位置だ。爆心地から数メートルしか離れていない。
「アタシのプロデューサーが作った服は、絶対にアタシを守ってくれるの! ホーリー・メイクアップ!!」
ボガァァァァァァァァァァンッ!!!!
採石場に、轟音と猛烈な爆炎が巻き起こった。
画面が真っ白に染まり、爆風がカメラを激しく揺らす。
「キュララちゃん!?」
「ゴォッ!?」
私とギデオン様が思わず立ち上がった、その時。
黒煙の中から、咳き込むこともなく、ケロッとした顔のキュララちゃんが現れた。
「はい、無傷〜! すごくない!? これ、超至近距離で爆風浴びたのに、フリルの端っこすら焦げてないのよ!!」
彼女の着ているホーリー・タクティカル・フリルドレスは、爆風の煤ひとつついておらず、神々しいほどの光沢を放っていた。
『えええええええええ!?』
『嘘だろ!? 無傷!?』
『どんな魔導防具だよそれ!!!』
『可愛くて最強とか神かよ! 服作ったプロデューサー何者!?』
画面のコメント欄が、信じられない速度で滝のように流れ――直後、画面が虹色に光り輝いた。
【銀貨100枚のスーパーチャット!】
【金貨10枚のスーパーチャット!】
【アバロン魔皇国から金貨50枚!】
「キターーーーッ! スパチャの嵐ですのーーっ!! 『お賽銭箱型掃除機』、フル稼働ですのー!!」
画面の外で、リーザちゃんが巨大な掃除機型ガジェットを振り回し、虚空から降ってくる電子マネーと金貨の概念をギュインギュインと吸い込んでいる。
「ふふっ、みんなありがとー! まだまだ稼ぐよー! 次はこの服で魔獣の巣に突撃してみよっか!」
キュララちゃんが高笑いし、リーザちゃんが歓喜の舞を踊る。
ギデオン様は「……君の友人たちは、とても、その……バイタリティに溢れているな」と少し引いていたが、私としては服の性能が証明されて大満足だった。
その頃。
ポポロ村から遠く離れた、ルナミス帝国の王都。
煌びやかな屋敷の一室で、私の元婚約者である伯爵家の嫡男が、青ざめた顔で魔導通信石の画面(キュララちゃんの配信)を凝視していた。
「な、なんだあの服の異常な防御力は……!? それに、あのフリルの縫製パターンと糸の処理……間違いない、あれは我が家から追放した、リゼットの手縫いと同じだぞ……っ!?」
彼が私の服の真の価値に気づいた時には、すでに遅かった。
私のいない元実家には、ゆっくりと、しかし確実に『破滅』の足音が近づいていたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「強欲コンビの素材集め、えげつないww」
「公爵様がヒロインのプレゼント発言で泣いてるの尊い……!」
「元婚約者、やっとリゼットのチートに気づいたか(遅い)」
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読者の皆様のポイントが、キュララちゃんの次なる過激配信のモチベーションになります!笑
次回、ついにリゼットを追放した元実家に異変が……!?
主人公が楽しく服を作っている裏で進行する「放置系ざまぁ」が始まります!
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