第85話:兄の帰還と、中庭の成果発表
「オリカ、ただいま! 学院から戻ったよ!」
中庭に響いた弾む声に振り返ると、制服姿のお兄様が足早にこちらへ駆け寄ってくるところだった。
放課後になると、こうしてすぐに私の様子を見に来てくれるのが日課になっている。
『わふっ!』
ノワールが立ち上がり、しっぽを振ってお兄様を出迎える。
「ルファス様、おかえりなさいませ。今日も学院でお疲れ様でした」
「ハルト先生、いつも妹の指導をありがとう。……それでオリカ、今日はどんなお勉強をしていたんだい?」
屈託のない笑顔で私の頭を撫でてくれるお兄様に、私は胸を張って手の平を差し出した。
「お兄様、見ててね!」
息を整え、周囲の風のマナと波長を合わせる。
手の平に乗った若草色の風車が、澄んだ音を立てて勢いよく回転を始めた。
風車から放たれた柔らかなそよ風が、お兄様の汗ばんだ前髪をふわりと心地よく揺らす。
「……っ! これは、オリカの魔力じゃない……? 周囲の自然マナをそのまま紙に循環させているのかい?」
さすが王立魔導学院のエリート生。
お兄様は一瞬で魔法の構造を見抜き、驚きに目を見開いた。
「はい! 先生に教えてもらって、自然の力を紙に定着させる練習をしているんです」
「すごいよオリカ……! 大気中のマナを無詠唱で外部媒体に定着させるなんて、学院の高等部でも苦戦する生徒がいる技術だよ」
お兄様は興奮気味に私を抱き上げ、エリアス先生に向き直って深く頭を下げた。
「先生、改めて感謝します。妹の才能をこんなに正しく、美しく伸ばしてくれて……!」
「いえ、すべてはオリカ様の類まれな感性と、素直な探求心の賜物ですよ」
夕暮れの温かな光に包まれながら、私たちは笑顔でその日の授業を締めくくるのだった。




