第81話:はじめての授業と、風の折り鶴
面接から数日後、いよいよエリアス先生による最初の授業の日がやってきた。
屋敷の二階にある日当たりの良い図書室。
大きな木製テーブルの上に、エリアス先生は分厚い教科書ではなく、数冊のノートと綺麗なガラス瓶、そして様々な種類の紙を並べた。
「オリカ様、まずは座学の基礎から……と行きたいところですが、初日ですので、あなたの『折り紙魔法』がどのような仕組みで発動しているのかを一緒に観察してみましょう」
「はい、先生!」
私の足元には、すっかり先生に気を許したノワールが伏せて丸くなっている。
私は青い魔導折り紙を手に取り、慣れた手つきで丁寧に角を合わせ、小さな『鶴』を折った。
ふうっ、と息を吹きかけ魔力を通すと、折り鶴はパタパタと翼を羽ばたかせ、ふわりと宙へ浮かび上がった。
「……素晴らしいですね。紙を折ることで立体を作り、その折り目自体が魔力の流れる『回路』になっているようです。通常、魔導士は空中に魔法陣を描く必要がありますが、オリカ様は紙そのものを立体魔法陣として機能させている」
エリアス先生は目を輝かせながら手元のノートにさらさらとペンを走らせる。
「この鶴は、どのようなイメージで動かしているのですか?」
「ええと……『風に乗って遠くまで飛んでいけ』って思いながら、翼の折り目に魔力を込めています」
「なるほど、意志の伝達と魔力の指向性が完璧に一致していますね。では、このガラス瓶の周りを一周させて、私の手の平に着地させることはできますか?」
「やってみます!」
私が指先で軽く合図を送ると、風の折り鶴は瓶の周りをくるりと綺麗に旋回し、エリアス先生の手の平へ音もなくふわりと舞い降りた。
「見事です! コントロールの精度も申し分ありません」
先生の惜しみない称賛と優しい笑顔に、私の胸はワクワクとした達成感でいっぱいになるのだった。




