第77話:型破りな才能と、三枚目の書類
目の前に咲いた折り紙の花を見つめたまま、セリアはしばらくの間、微動だにできなかった。
既存の魔導理論では説明がつかない高精度の付与魔法を、わずか7歳の少女が息を吹きかけただけで成立させている。
「……クローデル殿」
静寂を破ったのは、お父様の静かな声だった。
「貴殿のこれまでの教育実績と理論の深さは疑いようもない。だが、型にはめることだけを是とし、我が娘の可能性を否定する者を家庭教師に据える気はない」
「……閣下のおっしゃる通りですわ」
セリアは眼鏡の位置を直すと、深々と頭を下げた。
先ほどまでの冷たい傲慢さは消え、自らの未熟さを認めた学究の顔になっていた。
「私の浅学を恥じ入るばかりです。……オリカ様のその稀有な才能は、私の狭い型などに閉じ込めるべきではありませんでした。本日は貴重なものを見せていただきました」
礼儀正しく一礼し、セリアは静かに部屋を辞していった。
悪意はなかったものの、方針の不一致による不合格だ。
『くぅん』
ノワールが「惜しかったね」とでも言うように、私の足元にすり寄る。
「オリカの魔法を頭ごなしに否定するような先生なんて、僕もお断りだよ」
お兄様が腕を組みながらふくれっ面をする横で、お父様が手元の書類をめくった。
「さて……残る候補者は、あと一人だな」
机の上に置かれた最後の一枚の書類。
そこには、前の二人とはまったく毛色の違う、少し風変わりな経歴が記されていた。




