第76話:型にはめる教育と、私の魔法
「紙遊び、ですか?」
静まり返った部屋の中で、私は静かに問い返した。
お父様とお母様の眉がピクリと動き、お兄様の瞳には鋭い光が宿っている。
だが、セリアは意に介した様子もなく、冷たい視線のまま淡々と告げた。
「ええ。公爵家の令嬢ともあろうお方が、そのような無意味な手遊びに現を抜かすなど言語道断です。王立魔導学院で求められるのは厳格な理論と定型魔法。規格外の道楽など、百害あって一利もございませんわ」
彼女の教育論は、徹底した既存の型への押し込み。
実績があるからこその傲慢さと、自分の理論以外を一切認めない頑ななプライドだった。
(この人は悪い人じゃない……でも、生徒の可能性を自分の枠に閉じ込めて、心を折ってしまうタイプだ)
私は膝の上で、淡い若草色の魔導折り紙をすっと折った。
流れるような手つきで折られたのは、小さな一輪の「つぼみ」。
ふうっ……と息を吹きかけると、紙のつぼみはふわりと浮かび上がり、セリアの目の前でゆっくりと花びらを開いてみせた。
花弁からは、清涼な風と微細な癒やしの魔力がふわっと広がっていく。
「なっ……詠唱も魔法陣の展開もなしに、紙を媒体として属性を安定定着させている……というのですか……!?」
理論のスペシャリストだからこそ、セリアは目の前で起きた現象の異常性に気づき、眼鏡の奥の目を見開いて息をのんだ。
「クローデル先生の理論は素晴らしいと思います。でも……私は決められた枠に収まるためじゃなく、大切な人を笑顔にするために魔法を学びたいんです」
私の言葉に、セリアは絶句したまま立ち尽くしていた。




