第75話:二人目の候補者と、冷たいプライド
一人目の不届き者が退場し、室内の空気を入れ替えたあと、二人目の面接が始まった。
コンコン、と響いたノックの音とともに現れたのは、仕立ての良い紺色のローブを身にまとった妙齢の女性だった。
書類の名前は『セリア・クローデル』。
王立の高等機関で教鞭を執った経歴を持ち、貴族の子息たちを何人も難関校へ合格させてきたという「魔導理論と座学のスペシャリスト」だ。
「お初にお目にかかります、ギルバート公爵閣下。セリア・クローデルと申します」
背筋をピンと伸ばし、無駄のない所作で一礼するセリア。
先ほどのベルガーのような下卑た視線や、屋敷の金品を狙うような空気は一切ない。
(見た目はすごくしっかりした先生に見えるけど……)
『……クゥ』
私の足元で、ノワールが耳を後ろに倒して微かに身構えた。
敵意や悪意ではない。けれど、どこか刺々しい違和感を察知しているようだ。
「クローデル殿、我が娘オリカへの指導について、どのような方針をお持ちか聞かせてほしい」
お父様の問いかけに、セリアは眼鏡のブリッジを指先で押し上げ、感情の読めない冷淡な声で淡々と答えた。
「はい。公爵令嬢としての基礎教養、歴史、語学、そして魔導理論を毎日8時間、徹底的に叩き込みます。甘えは一切許しません。公爵家の名に泥を塗らぬ『完璧な生徒』に仕上げてみせます」
その言葉と同時に、彼女の視線が私の手元にある折り紙と、足元のノワールに向けられた。
「――つきましては、集中力を削ぐような動物の同席、ならびにそのような『子供じみた紙遊び』は今日限りで一切禁じさせていただきます」
冷たく言い放たれたその言葉に、室内の空気がぴりりと張り詰めた。




