第59話:賢者の約束と、あたたかな笑顔
「ハハハ! そう恐ろしい顔をするな、ギルバート、ルファス。わしはこの愛らしい子を無理に連れ去ろうなどと考えておらんよ」
学院長は目尻を深く下げて破顔すると、温かな眼差しで私を見つめた。
先ほどまでの緊迫感が嘘のように、応接室の重苦しい空気がふっと和らぐ。
「学院長……本当ですか?」
「うむ。これほどの才能と神聖な魔力を持つ子だ。下手に公表すれば、国内外の良からぬ輩に狙われかねん。この素晴らしい芽は、温かい家族の愛の中で育むのが一番じゃ」
賢者としての深い英知を持つ学院長のお言葉に、警戒姿勢をとっていたお父様とお兄様も、胸をなでおろして肩の力を抜いた。
「感謝いたします、アルフレッド殿……」
「ただし! 条件があるぞ」
お父様の言葉を遮り、学院長は悪戯っぽくニヤリと笑った。
「この子が大きくなって魔法を学ぶ歳になったら、真っ先に我が『王立魔導学院』に籍を置かせること! ……どうじゃ?」
(ふふっ、おじいちゃん賢者様、ちゃっかりしてるなぁ♪)
私はクスクスと笑いながら、「あぅ~♪(いいよ~)」とパチパチ手を叩いた。
お父様とお兄様は顔を見合わせ、苦笑しながらうなずいた。
「……わかりました。オリカが望むならば、その時が来たら検討いたしましょう」
「よし! これで約束成立じゃな!」
学院長は満足そうにうなずくと、手の中の小鳥を見つめ、少し恥ずかしそうに私に問いかけてきた。
「……時にオリカちゃん。この素敵な小鳥、わしが宝物として持ち帰ってもよいかな……?」
「あぅ! いいよ~♪」
私がニコニコでうなずくと、学院長は「おお、ありがとうね……!」と目頭を熱くさせながら、小鳥を大切そうに胸のポケットにしまったのだった。




