第58話:言い逃れと、賢者の確信
「ギルバート……お前、使えはしないと言ったな……? この小鳥、一体……!?」
冷や汗を垂らすアルフレッド学院長の声に、応接室の空気が一瞬で凍りついた。
お父様は一瞬だけ苦々しい顔をしたが、すぐに鉄壁のポーカーフェイスを取り戻してフッと鼻で笑った。
「……ふん、何を大袈裟な。それはオリカが手元でこねくり回していたただの紙の玩具ですよ。我が公爵家の特別な魔導具が近くにあったため、魔力が少し移っただけでしょう」
「そうです学院長! 妹がたまたま手にした紙に、屋敷の魔導結界が干渉したに過ぎません!」
お父様とお兄様が完璧なコンビネーションで白々しく言い放つ。
(ふ二人とも、目が全然笑ってないよ……!)
私は二人の必死なガードぶりに心の中でツッコミを入れつつ、ノワールの背中をなでなでした。
学院長は手の中の折り紙の小鳥を慈しむように見つめ、ため息を漏らした。
「……なるほど、そういうことにしておいてやろう。だがな、ギルバート。ワシの目は誤魔化せんぞ」
学院長は視線を下げ、私の足元に静かに佇むノワールへと目を向けた。
「その傍らに寄り添う黒い犬……まさか、先日遠方から感知したあの神獣の気配を纏っておるのか……!? そしてこの折り紙に宿る、淀みのない純粋で膨大な魔力……すべてはこの愛らしいオリカちゃんから発せられているものだな」
「…………」
お父様とお兄様は言葉を失い、グッと口を一文字に結んだ。
賢者としての深い知恵と眼力を持つ学院長には、誤魔化しなど通用しなかったのだ。
「あぅ~?(おじいちゃん、難しい顔してどうしたの?)」
私が首をかしげて可愛らしく見つめ返すと、学院長は一転して目尻を下げ、破顔したのだった。




