第55話:届いた便りと、小さな大魔法士
「見てください父上……! オリカは今度は布まで動かしています!」
「なんと……! 裁縫や布製品にまで魔導術式を付与できるとなると、これは防具や衣服の概念すら変えてしまうぞ……!」
膝の上のハンカチうさぎを見て、お父様とお兄様が再び大興奮で議論を重ねていたその時――。
コンコン、と部屋の扉がノックされ、執事のセバスが恭しく入ってきた。
「旦那様、王立魔術学院ならびに王宮より、親書が届いております」
「親書だと……?」
お父様が受け取った手紙に目を通すと、その表情が少しだけ険しくなった。
隣でのぞき込んだお兄様も、驚きに目を見開いている。
「父上、これは……」
「うむ。先日のノワール覚醒の際の巨大な魔力波と、オリカの誕生日に放たれた神聖な光……。それらを感知した王立魔術学院の賢者たちが、ぜひ一度オリカに会いたいと言ってきているのだ」
(えっ、賢者様……!?)
私がパチクリと目を丸くすると、お父様はお手紙をキュッと握りしめ、キッと強い眼差しになった。
「断る! オリカをそのような危険な場所に連れて行けるか! あそこは魔術バカどもの巣窟だぞ!」
「父上の言う通りです! 僕も大反対です! オリカの規格外な才能が知れ渡れば、王国中の研究者どもが押し寄せてオリカの平穏が脅かされます!」
二人は過保護全開で、息の合った連携で即答拒否しようとしている。
しかし、お母様が優しく微笑みながら紅茶を差し出した。
「でもあなた、断り続けては余計に怪しまれてしまいませんか? 学院長はお義父様(前公爵)の旧友でもいらっしゃいますし……」
「うっ……それはそうだが……」
お母様の正論に、言葉を詰まらせるお父様とお兄様。
オリカの秘められた凄まじい力が、ついに公爵家の外にも影響を及ぼし始めようとしていた。




