第50話:母へ捧ぐ永遠の薔薇と、幸せな昼下がり
「あらあら、まあ……! 部屋で何が起きているのかしら?」
パタパタと部屋中を飛び回る紙の小鳥と、それを楽しそうに追いかけるノワールの声を聞きつけて、お母様が部屋に入ってきた。
宙を優雅に舞う紙の小鳥を目にした瞬間、お母様は綺麗なお目目を丸くして驚いた。
「まあ……! 紙の小鳥が飛んでいるわ……! これもオリカが?」
「母上! そうです、オリカが息を吹きかけた瞬間に、この小鳥が動き出したのです!」
お兄様が興奮冷めやらぬ様子で説明すると、お母様は「なんて素晴らしいことでしょう……!」と胸の前で手を合わせ、感涙の表情を浮かべた。
(ふふっ、お母様にも何か作ってあげたいな♪)
私はトコトコとテーブルへ歩み寄ると、赤い綺麗な正方形の紙を一枚手に取った。
指先を器用に動かし、折り目を重ねていく。
前世の病室で何度も折っていた、大好きな一輪の花――。
(できた! お母様にぴったりの立派なバラの花♪)
完成した赤い紙の薔薇を手にして、お母様のもとへトコトコと駆け寄る。
指先でそっと差し出しながら、「あぅ〜♪(お母様、どうぞ!)」とプレゼントした。
ふうっ……と息を吹きかけると、紙でできた薔薇の花弁がほんのりと温かな光を帯びた。
本物以上に甘く気品ある香りが漂い、散ることも枯れることもない【永遠の魔導薔薇】へと変化したのだ。
「まあ……! 私に……私にくれるの、オリカ!?」
お母様は感激のあまりその場にへたり込み、宝物のように大切に薔薇を胸に抱きしめた。
「ありがとう……! ありがとうオリカ! このお花は私の命に変えても一生大切にしますわ……!!」
「……くっ、エレノアばかりズルいぞ……! 私にも、私にも作ってくれオリカ……!」
「父上だけずるいです! オリカ、僕にも……お兄様にも何か折ってくれませんか……!?」
涙ぐむお母様の後ろで、お父様とお兄様が羨ましそうに身を乗り出してくる。
賑やかで温かい部屋の中で、オリカは「ふふっ、次は二人にも折ってあげるね♪」と可愛らしく微笑むのだった。




