第48話:天使のあんよと、羽ばたく紙の鳥
あの誘拐騒動から、数週間が過ぎた頃――。
エヴェレット公爵家のお屋敷は、従来の十倍の警備が敷かれていた。
庭の隅々まで精鋭の騎士が配置され、さらにオリカのそばには常に神獣ノワールが黒い影のように寄り添っている。
「あぅ~、ふふっ♪」
一歳の誕生日を過ぎた私は、ふかふかの高級絨毯の上をトコトコと楽しそうに歩いていた。
少し前までは伝い歩きだったけれど、今では自分の足でしっかりと力強く歩けるようになっている。
「み、見たかルファス……! オリカが……我が愛娘がトコトコと歩いているぞ!!」
「父上、静かに! オリカの集中が切れて転んでしまいます! ……ああっ、でもなんて愛らしいんだ……!」
少し離れた場所で、お父様とお兄様が息をのんで見守っている。
お父様の手には、いつ撮影してもいいように高級な魔導記録水晶が握られていた。
(ふふ、二人とも目が真剣すぎるよ……)
私はトコトコと歩いてお部屋のテーブルのそばへ向かうと、爪先立ちになって手を伸ばした。
そこには、お母様が用意してくれた最高級の正方形の紙(耐火・防水処理された極上品)が置かれている。
(久しぶりに、何か折ってみようかな♪)
前世の病院で鍛え上げた指先の技術と、魂に刻まれた【折り紙】のスキル。
私はちっちゃな手で紙を器用に折りたたみ、一羽の小さな「小鳥」を作り上げた。
(できた! かわいい鳥さん♪)
完成した紙の小鳥を手のひらに乗せ、ふーっと息を吹きかけると――。
パサッ……パササッ……!
【折り紙】と【MP:∞】のチート魔力が反応し、ただの紙だった小鳥が命を吹き込まれたように翼を羽ばたかせた!
小鳥は部屋の中を優雅に飛ぶと、お兄様の指先にちょこんと留まり、『チッチッ♪』と可愛らしく鳴いたのだ。
「な……っ!?」
「紙の……鳥が飛んだ……!?」
目の前の光景に、お父様とお兄様は言葉を失って固まってしまった。
オリカの規格外な魔法の才能(無自覚)が、またしても公爵家に衝撃を与えるのだった。




