第44話:駆けつける絆と、未知の味方
一方その頃、公爵家のお屋敷――。
庭の奥にある秘密の森で、静かにオリカの帰りを待っていたノワール。
しかし次の瞬間、ぴくっとツヤツヤの黒い耳を立たせた。
『くん……? ……きゃんっ!?』
オリカから貰った首輪が、かすかに温かく光った。
大好きなオリカの気配が、どんどん遠くへ離れていく――!
ただ事ではない胸騒ぎを感じたノワールは、風のように森を駆け抜け、屋敷の門を跳び越えて王都の街へと飛び出した。
◇
「くそっ……! どこだ、オリカ……っ!」
王都の街中では、お兄様がお父様や騎士たちと共に、血眼になって裏通りや地下道を捜索していた。
目撃情報を頼りに必死で駆け回るが、奴隷商人の手がかりは未だ掴めない。
(僕が目を離した隙に……僕がもっと注意していれば……!!)
己の不甲斐なさに拳を強く握り締め、歯を食いしばるお兄様。
その時――。
ガルルルッ……!
「!? なんだ!?」
街の路地裏から、猛烈なスピードで風を切り裂き、一匹の黒い獣が飛び出してきた。
その神聖で圧倒的な気配に、周りの騎士たちが一斉に剣を抜く。
「ひっ……魔物か!? いや、なんだあの気配は……!?」
「閣下、危険です! お下がりを!」
お父様が冷徹な眼光で立ちふさがり、手に凄まじい火の魔力を宿らせた。
「ちっ、こんな時に邪魔立てするか……消し飛べ――」
「待ってください、父上!!」
お兄様が叫び、お父様の前に飛び出した。
お兄様は目の前に立ち止まった黒い獣――ノワールを凝視する。
「ルファス、退け! あれは只の魔物ではない……フェンリル級の神獣だぞ!」
「違います、父上! この子はノワールです!
オリカの力によって覚醒した、オリカの守護神獣なんです!」
「何……!?」
お父様とお母様が目を見開く。
ノワールはお兄様の顔をまっすぐ見つめると、『わんっ!』と短く吠え、王都の外へと続く街道を鼻先で指し示した。
「……ノワール。もしかして、オリカの場所が分かるのか!?」
お兄様が問うと、ノワールは頼もしく『こくり』と頷いたのだった。




