第41話:王都のお買い物と、消えた天使
「まあ、オリカ! このドレスもとっても似合うわ!」
「母上、こちらのレースがついたデザインもオリカの可愛さを引き立てますよ!」
今日は家族みんなで王都の高級店街へお買い物。
ずらりと立ち並ぶ老舗サロンの中でも、公爵家御用達の高級子供服店を貸し切って、
お母様とお兄様は大はしゃぎだった。
(わあぁ……どれもフリフリで可愛い服ばかり!
前世は病室でパジャマばかりだったから、服を選んでもらえるのってすごく嬉しいな)
お父様は、鏡の前でちょこんと立っている私を見て、
鼻血が出そうなのを必死に耐えながらボソッと呟く。
「……店主。この店にあるすべての服を我が家に届けるように」
(お父様、流石に買い占めすぎよ!?)
相変わらず重すぎる家族の愛に苦笑しつつも、私は幸せな気持ちでいっぱいだった。
今日身に着けているのは、お母様が選んでくれた最高級のシルクの服。
まだ試着段階だから、普段お屋敷で着ているような「防護の付与魔法」はついていないけれど、
家族全員と最強の警備が周りにいるのだから、危険なんて万に一つもないはずだった。
「さあオリカ、次はあちらの試着室で、この可愛いお洋服に着替えてみましょうね」
お母様が私を抱っこして試着室へ入れると、ふかふかな台の上へそっと降ろしてくれた。
「母上、こちらの靴も合わせましょう!」
「まあ素敵! ルファス、それも持っていきましょう」
カーテンの向こうから、お母様とお兄様が次の服を選びながら
楽しそうに会話している声が聞こえてくる。
(ふふっ、お母様たちすごく楽しそうだなあ……♪)
私が微笑ましく声を聞いていた、ほんの数秒後のことだった。
カチャリ。
背後にあった大きな姿見(鏡)が、音もなくクルリと回転した。
(えっ……!?)
私が声を発するヒマもなく、台ごと足元が滑り落ち――
私は鏡の裏にあった「暗い穴」の中へとすぽんと落とされてしまったのだ!
「オリカ、次はこの靴を合わせてみましょう……あら?」
数秒後、次の靴を手にしたお母様が試着室のカーテンを開けた。
しかしそこには、さっきまで天使のように座っていた愛娘の姿は、影も形もなかった。
「……オリカ……?」
お母様の手に持っていた小さな靴が、床へポロリと落ちた。




