第36話:はじめてのコントロール
「すごいよオリカ!
まさか一回見ただけで、体内の魔力を指先へ集めるなんて……!」
お兄様は興奮冷めやらぬ様子で、
私を高い高いするように抱き上げ、何度も頭を撫でてくれた。
(え、えへへ……お兄様に褒められるのは嬉しいけれど、
本番はここからよ!)
いくら魔力を指先に集められても、
発動させる時にドカンとゴッド級効果が出ちゃったら意味がない。
目指すは、お兄様みたいな「素朴で可愛い基礎魔法」だ!
私はお兄様の腕の中から地面に下ろしてもらうと、
「ばぶーっ!(もう一回やる!)」と鼻息荒く宣言した。
「ふふ、練習熱心だね。
よし、じゃあ次は集めた魔力に『属性』のイメージを乗せてごらん。
さっき僕がやったみたいに、優しく、小さな火を思い浮かべるんだ」
お兄様が優しく隣でアドバイスをくれる。
膝の横では、ノワールも『わんっ!』と元気よく尻尾を振って応援してくれていた。
(よし……イメージはろうそくの小さな灯火。
魔力をドバッと出さないように、キュッと絞って……!)
私は小さな右手を前にかざし、
ぎゅっと目を閉じて全集中した。
(魔力は1……いや、0.1くらいの感覚で!
絞って、絞って……『ファイア』……!)
ぽっ。
静かな音と共に、私の人差し指の先に
ちいさな、ちいさな赤色の火種が灯った。
大きさは、マッチの火よりも一回り小さいくらい。
光の柱も立たず、爆音も鳴らず、ただの素朴な小さな火だ。
(で、できた……! 暴走してない!
本当に、本当にただの小さな火が出せたわーーーっ!!)
ついに「まともな魔法」を成功させた感動で、
私は「できたー!」と大興奮。
すると、それを見ていたお兄様が――
ガタタッと勢いよく膝をつき、目を見開いた。
「な……なんてことだ……!!」
(えっ? お兄様……?)
「オリカ、君は……こんなに小さくて繊細な火まで出せるようになったのかい!?
魔力を暴走させず、こんなに完璧にコントロールして見せるなんて……!
やっぱり君は天才だ! 僕の自慢の妹だよ!!」
(えっ、ただの普通の火よ!?
お兄様がさっきやったのと同じやつよ!?)
「ああ、なんて愛らしい火なんだ……!
初めての魔法でこんなに綺麗な火を出せるなんて、世界中探しても君だけだよ!
すごいよオリカ、本当によく頑張ったね!!」
お兄様は目からウロコどころか涙をボロボロ流さんばかりの勢いで、
私をドバッと抱きしめ、頬をすりすりしながら絶賛の嵐!
(お、お兄様……フィルターがかかりすぎてて、
『普通の成功』すら大偉業になっちゃってるわ……!)
でも、お兄様がこんなに嬉しそうに褒めてくれるのが誇らしくて、
私は誇らしげに胸を張るのだった。




