第35話:お兄様の真似っこ
(……うん、決めたわ。
このままじゃ何を作っても神級兵器になっちゃう!
ちゃんとお兄様みたいに『魔力の微調整』を覚えなきゃ!)
折り紙の首輪(神獣の誓約輪)事件で危機感を募らせた私は、
魔力操作の特訓を決意していた。
そんなある日。
お兄様がこっそり部屋を抜け出し、
あの『秘密の森』へ向かおうとしている気配を察知!
私はよちよちと後ろからついて行き、
お屋敷の廊下でお兄様の服の裾をギュッと引っ張った。
「ばぶぅーっ!(お兄様、私も連れて行って!)」
「っ!? オリカ……?
だ、ダメだよ、今日はこれから魔力操作の特訓で――」
お兄様は焦ったように周囲を気にしていたけれど、
私が潤んだ瞳で「ばぶぅ……(だめ?)」と上目遣いで見つめると、
一瞬でノックアウトされたように顔を真っ赤にした。
「〜〜〜っ! うっ、うう……仕方ないなぁ、もう!
本当にお兄ちゃんから離れない甘えんぼうさんなんだから。
……いいよ、静かに見ているだけならね?」
(ふふっ、お兄様チョロ……じゃなくて優しい!)
お兄様はデレデレの笑顔で私を抱っこすると、
大切そうに抱え直して秘密の森へと向かった。
◇
秘密の鍛錬場に着くと、首輪(誓約輪)をつけたノワールが
『わんっ!』と嬉しそうに出迎えてくれた。
「よし、オリカ。
お兄ちゃんが魔力をどうやって練り上げているか、よく見ていてね」
お兄様は真剣な表情になると、右手を前にかざした。
体内の魔力をゆっくりと手元に集め、
指先にちいさな光の玉を作り出していく。
(なるほど……体の中の魔力を流すイメージで、
先端に少しずつ集めて……抑え込む……!)
お兄様の綺麗な魔力操作をじーっと見つめていた私は、
「自分でもできるかも?」と思い立ち、
お兄様の真似をして、ちょこんと小さな右手を前に出してみた。
(手に意識を集中させて……魔力をほんのちょっとだけ……)
うーんと念じると、
私の小さな指先からも、ぽっとほんのり温かい
小さな光の粒が浮かび上がった。
「……え?」
お兄様が目を見開いて、私の指先と顔を交互に見つめる。
「お、オリカ……?
君、いま僕の魔力操作を見ただけで……真似したのかい!?」
(あ、しまった! 飲み込みが早すぎたかしら!?)
「な、なんて恐ろしい才能なんだ……!
一度見ただけで魔法の基幹構造を理解して模倣するなんて……!
さすが僕の聖女……いや、僕の自慢の妹だ!!」
お兄様は感動のあまり私をドバッと抱き上げると、
「天才だ! 天才だよオリカ!」と頬をすりすりしながら
大絶賛の溺愛モードに突入してしまうのだった。




