第28話:お兄様の秘密の場所
部屋のふかふかラグの上で、
私はポンと小さく座り込み、うーんと思考を巡らせていた。
(お風呂の『ウォーター』、深夜の『ライト』、
お部屋の『クリーン』に、絵本の『ピクチャー・クローン』……。
うん、基礎的な生活魔法の検証は、一通り完了したわね)
結果は……まあ、全滅というか、大暴走というか。
魔力1で発動させているのに、
全部が全部、規格外のゴッド級効果を発揮してしまった。
(これ以上は下手に部屋の中で試すのも危ないわね。
……次はどうしようかしら?)
私が今後の「やらかさないための対策」を考えていると、
部屋の扉がコンコンと軽く叩かれ、
パッと明るい笑顔のお兄様が入ってきた。
「オリカ、起きてたかい?
今日は家庭教師の先生がお休みなんだ。
……だから、ちょっとお散歩に行かないかい?」
お兄様は、金色の瞳をいたずらっぽく輝かせると、
口元に人差し指を立てて「しーっ」と微笑んだ。
「父上や母上には内緒でね。
公爵邸の裏手にある、森の近くまで行こう。
オリカに見せたい場所があるんだ」
(えっ、お兄様と秘密のお散歩!?
ずっとお部屋の中にいて退屈だったから、すっごく嬉しい!)
私は「ばぶーっ!(行くー!)」と両手を広げ、
お兄様に抱っこしてもらった。
抱っこされながら屋敷を抜け出し、
緑豊かな広い庭を突っ切って、公爵邸の裏手に広がる森へ。
木漏れ日がキラキラと差し込む心地よい小道を抜け、
少し開けた木々の隙間にたどり着いた。
お兄様は私をそっと地面(柔らかい草の上)に降ろすと、
ちょっぴり得意気な顔で胸を張った。
「ここだよ、オリカ。
……実はね、ここは父上や母上にも内緒なんだけど、
僕がこっそり『魔力操作』の練習をしている場所なんだ」
(へえええっ! お兄様の秘密の鍛錬場!?)
「君という『聖女』を守るために、
お兄ちゃんももっと強くならなきゃいけないからね。
今日はここで、僕の練習成果をオリカに見せてあげるよ!」
気合十分なお兄様の言葉に、
私は「(あ、また聖女って言ってる……)」と思いつつも、
お兄様がどんな魔法の練習をしているのか興味津々で、
目をキラキラと輝かせるのだった。




