第25話:動けるばぶ、行動範囲の拡大!
第25話:動けるばぶ、行動範囲の拡大!
あの怒涛の生活魔法実験の日々から数ヶ月。
私はすくすくと、かつ超スピードで成長を遂げていた。
ハイハイを爆速マスターした私だが、
なんと今では、家具につかまっての「つかまり立ち」や、
「よちよち歩き」で自立歩行ができるまでに進化していたのだ!
(ふふん、どうよ!
ハイハイの時期をすっ飛ばすような勢いだけど、
やっぱり自分の足で立って歩く視界は最高ね!)
行動範囲が劇的に広がった私は、
さっそく公爵邸の探検に乗り出していた。
もちろん、よちよち歩きの私を心配して、
パパやママ、そして専属のメイドさんが付き添ってくれている。
そして何より――。
「オリカ! そっちは段差があるから危ないよ。
ほら、お兄ちゃんが抱っこしてあげようか?」
私の斜め後ろからは、
あの深夜の秘密を共有して以来、
完全に「過保護な騎士」と化したお兄様が、
金色の瞳をキラキラさせながらぴったりとマークしていた。
(お兄様、気持ちは嬉しいけれど、
私は自分の足で、この世界の知識を広げたいのよ!)
私がよちよちと歩いて目指したのは、
公爵邸が誇る広大な「図書室」だった。
床に敷かれたふかふかの高級絨毯をゆっくり踏みしめ、
ずらりと並ぶ巨大な本棚を見上げる。
(おお……! さすが公爵家。
歴史書から魔導書、地理の本まで山のようにあるわ。
早く文字を読めるようになって、
この世界の魔法体系をちゃんと勉強したいなぁ)
本棚の低い位置にある、
絵本や簡単な図鑑が置いてあるコーナーにたどり着き、
私は一冊の本に手を伸ばした。
それは、この世界の「精霊や魔法」について書かれた
子供向けの綺麗な絵本だった。
ペラリ、と小さな手で不器用にページをめくってみる。
「おや、オリカはもう本に興味があるのかい?
やっぱり、精霊たちに愛される子は賢いなぁ。
よし、お兄ちゃんが読んであげるね」
お兄様は嬉しそうに私の隣に座り込み、
絵本を一緒に覗き込んできた。
その絵本には、
『火の精霊・サラマンダー』
『水の精霊・ウンディーネ』
といった可愛い精霊のイラストが描かれていた。
(……あ、これ、お風呂場でお兄様が言ってたウンディーネだ。
やっぱり本物はもっと精霊精霊してるわよね。
まさかベビーバスにいるわけが――)
そんなことを思いながら、
私が絵本に描かれたウンディーネの絵を、
むにっと指先で触った、その時だった。
ツン。
(……あ、やば。今、無意識に指先から魔力が――)
日常的に魔力を指先から出し入れする訓練をしていたせいで、
本に触れた拍子に、ほんの、本当にほんのちょっぴり、
魔力が漏れ出してしまったのだ。
一瞬、絵本のウンディーネのイラストが、
ふわりと青く発光したような気がした。




