第22話:お兄様の深夜の超解釈
深夜の子供部屋。
部屋を優しく満たす温かいハニーゴールドの光の中、
私とお兄様は、お互いにじっと見つめ合っていた。
私は、布団から突き出したままの人差し指を、
今さらどうしていいか分からず、
「ば、ばぶぅ……?」と
とりあえず生まれて数ヶ月のピュアな赤ん坊の顔を作った。
(お兄様、これはその……
ちょっと夜中に目が冴えちゃって、
指先をツンツンして遊んでいただけなんです……!)
しかし、お兄様は私のすっとぼけなど
全く耳に入っていない様子だった。
その聡明な金色の瞳をきらきらと輝かせ、
うっとりとした表情で、部屋を包む温かい光を見上げている。
「間違いない……。
この心が安らぐほどの圧倒的な聖属性の魔力、
それに、悪しきものを完全に遮断する結界の気配。
……やはり、オリカは『光の精霊王』に愛されているんだね」
(ええええええっ!?
ウンディーネの次は、光の精霊王!?
いきなりランクが上がりすぎてない!?)
お兄様はベッドの横にそっと膝をつき、
私の小さな手を両手で優しく包み込んだ。
その金色の瞳には、深い慈愛と、
妹の天才っぷりを誇るような熱い光が宿っている。
「まだ魔力のコントロールもおぼつかない赤ん坊のオリカを、
悪い魔物や悪霊から守るために、
光の精霊王が、夜な夜なこうして自ら
聖なる結界を張ってくれているんだ。
ああ……オリカ、君はなんて愛おしく、気高い存在んだろう」
(違うの、お兄様!
精霊王は今、ここにはいないわ!
これ、私が魔力1で作った『ただの生活魔法』なのよ!)
必死に心の中で叫ぶ私だったが、
お兄様の感動は止まらない。
それどころか、お兄様は私の布団をそっとかけ直し、
満足そうに微笑んだ。
「この光の中にいると、
僕の魔力まで満たされて、すごく穏やかな気持ちになる。
……よし、オリカ。
光の精霊王が君を護ってくれていることは、
僕たち二人だけの『秘密』にしよう」
(えっ、秘密にしてくれるの!?)
てっきりパパやママに報告されると思った私は、
お兄様の言葉に思わず目を丸くした。
「光の精霊王の寵愛なんて、世間に知られたら、
悪い大人たちにオリカが利用されかねないからね。
君が大きくなるまで、お兄ちゃんが全力で守るよ」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれるお兄様。
……うん、勘違いの方向性はとんでもないけれど、
妹を思う気持ちは本物で、すごく頼もしい。
(お兄様、ありがとう。
……でもね、その精霊王の仕業にされている
『ただの生活魔法』を使って光り輝いている張本人が、
目の前で『ばぶー』って言ってる私だとは、
夢にも思わないでね……!)
お兄様の見事な秘密保持宣言(?)によって、
私のやらかしは、またしても
「精霊王のしわざ」として闇に葬られたのであった。




