第194話:千紙の真理と、貫かれた意志
「言葉だけで何ができる! 起動せよ、古代破壊兵器『アーケロン』!」
元教授の叫びとともに、祭壇の地下から現れた黒鉄の巨神が不気味な咆哮をあげた。
学園都市から吸い上げられた膨大な魔力が巨大な砲身に充填され、怪しい紫色の光が充満していく。
「オリカ、下がっていろ! 私が叩き潰す!」
お兄様が刃に圧倒的な魔力を纏わせ、前へ躍り出ようとする。
「いいえ、お兄様……ここは私に行かせてください!」
「オリカ!?」
私は前へ踏み出し、両手に持った純白の特殊魔導紙を空中に解き放った。
空中で舞う無数の紙片。私は指先を高速で滑らせ、幾何学的な魔力糸でそれらを一瞬のうちに紡ぎ直していく。
「表面の構造を真似ただけのあなたには、永久に理解できないはずです。折り紙の本質は、一枚の平面に秘められた『無限の折り重ね』と『折り目同士の信頼』にあることを!」
前世の病室で一人、祈るように折り続けていた紙。
この世界で出会った大好きな家族、友達、先生、そしてノワール。
みんなと重ねてきた絆の時間が、私の指先に宿り、絶対の魔術となって結集していく。
「見せてあげるわ……これが私の真の姿! 『千紙陣・天翔鶴華』!!」
パァァァァンッ!!
眩い白銀の光が地下大空洞を満たした。
展開されたのは、数千の折り紙の鶴が組み合わさった、神聖なまでに美しく強固な巨大多面体結界。
巨神『アーケロン』が放った極大の紫光線を、私の結界は微動だにせず、真っ向から完璧に受け止めた。
「な……なに!? 完全に解析したはずの術式を……防ぎきっただと!?」
男が驚愕に目を見開く。
「解析されたなら、その上を行くだけです! エリアス先生!」
「御意に、オリカ様!」
エリアス先生が差し出した魔術の鍵が、敵の模倣回路を瞬時に逆探知し、魔力供給を完全に遮断した。
「ライアン君、エレナさん!」
「任せろおぉぉっ!!」
「私たちの絆の力、思い知りなさい!」
結界が拓いた一瞬の隙を見逃さず、ライアン君の大剣とエレナさんの極大聖光術が巨神の胸核を穿つ。
「ガウゥゥッ!!」
最後に跳躍したノワールの漆黒の雷光が、黒幕の持つ魔導杖を微塵に打ち砕いた。
「バ、バカな……私の完璧な理論が……このような小娘の……折り紙にぃぃっ!?」
絶叫とともに、黒幕と巨大兵器は崩れ去り、大空洞を包んでいた不気味な紫の光は霧散していった。
学園都市を狙う脅威は、ついに完全に打ち払われたのだ。




