第193話:最深部への破術と、黒幕の嘲笑
「行くぞ、一気に最深部へ突入する!」
お兄様の鋭い一喝とともに、ライアン君の大剣とノワールの雷光が残りのゴーレムを一散させた。
エリアス先生が素早く手札の魔術を展開し、崩れ落ちた傀儡たちの魔導回路を遮断していく。
「オリカ様の『千紙陣』で足止めされている間に、敵の防衛線を突破しました。残る魔力脈の奔流は、あの古代祭壇へと繋がっています」
私たちは入り組んだ石柱の群れを駆け抜け、大空洞の中心――怪しくうごめく巨大な紫色の光柱が聳える祭壇へと躍り出た。
そこには、古びた黒いローブを纏った一人の男が立ち尽くしていた。
男の周囲には、学園都市から強引に吸い上げられた膨大な魔力が歪んだ幾何学模様を描き、浮遊している。
「クックック……よくぞここまで辿り着いたな、公爵家の落とし子たち。そして――異界の叡智を宿せし『千紙陣』の乙女よ」
男がローブのフードを払うと、その顔には不気味な黒い魔術刻印が血管のように浮き出ていた。
「あなたは……学園の古代魔導研究室を追放された、元教授……!」
エレナさんが息を呑む。
「追放だと? 戯言を! 奴らは私の真理に気づけなかっただけだ! 古代都市に眠る兵器を起動させるには、空間を絶対的に固定する『歪みのない構造論理』が必要だった……。そしてそれを完成させたのが、そこの小娘の折り紙魔法だ!」
男は狂気じみた笑みを浮かべ、手に持った黒い魔導杖を突きつけた。
「お前の術式構造はすでに『探知の紙蝶』や残滓を通じて完全に解析させてもらった! 今この瞬間、学園都市の魔力脈と『千紙陣』の論理が融合し、古代兵器が目覚めるのだ!」
ズズズ……と地響きが鳴り響き、祭壇の地下から巨大な黒鉄の影がせり上がってくる。
「解析した……ですって?」
私は前に一歩踏み出し、まっすぐに男を見つめた。
その瞳に一切の揺らぎはない。
「私の折り紙魔法は、ただの形や構造ではありません。誰かを守りたいという想いと、幾重にも重ねた試行錯誤の結晶です……! 表面だけを真似た偽物に、私の『絶対耐久』が破れるはずがありません!」
私は胸元から、輝く純白の特殊魔導紙を取り出した。
決戦の舞台は、ついに真のクライマックスへと突入する。




