第189話:絶対の誓いと、過保護な兄の背中(アレクシスの決意)
エリアス先生と別れ、月光が差す廊下を歩いていると、少し離れた柱の影に立つ人影があった。
白銀の飾りがついた生徒会長の外套を羽織り、腕を組んで佇むお兄様――アレクシスだ。
「お兄様……こんなところで何をされているのですか?」
「……オリカか」
私に気づいたお兄様は、ゆっくりと顔を上げた。いつもの大げさな言動や過保護な態度はすっかり影を潜め、そこには公爵家の長男であり、学園の生徒会長としての威厳に満ちた男の顔があった。
「明日からの地下大空洞での作戦……絶対に無茶はしないと誓いなさい」
そう言うお兄様の声は、どこかかすかに震えているようにも聞こえた。
「私はね、オリカ。お前が生まれた日のことを今でも鮮明に覚えている。小さくて、儚くて……少しでも強く抱きしめたら壊れてしまいそうだった」
お兄様は静かに私との距離を詰め、私の小さな両肩を大きな手で包み込んだ。
「お前がどれほど過保護だと言おうと、私にとってお前は世界で一番愛おしい妹なのだ。そのお前が、誰かを守るために危険な戦場に立とうとする姿を見るたび、私の胸は引き裂かれそうになる」
「お兄様……」
「だからこそ、今回の戦い……私は生徒会長として、そしてお前の兄として、あらゆる脅威を前線で叩き潰す。奴らが我が妹の指一本にでも触れようものなら、公爵家の全戦力をもって塵一つ残さず消し去ってやる」
お兄様はそう力強く言い切ると、不意にフッと柔らかい表情に戻り、私の頭を優しく撫でた。
「お前は後ろで、大好きな折り紙を折っていればいい。お前の作った美しい折り紙が世界を包む時、その一番近くで守るのが私の役目だからな」
「ふふ、お兄様……ありがとうございます。でも、私もお兄様を守るために全力を尽くしますからね!」
私が胸を張って答えると、お兄様は満足そうに微笑み、私の背中をそっと押してくれた。
どんな強大な敵が立ち塞がろうとも、この背中がある限り、私は決して倒れない。
兄の深い愛情と覚悟を受け取り、私の心は決戦に向けて完全に固まっていた。




