第185話:結集する手繰りと、決戦の前夜
黒い魔力の突撃を退けた翌日。学園都市の緊張感は最高潮に達していた。
「――全員、よく聞いてくれ!」
生徒会室の円卓を囲んでいたのは、お兄様を筆頭に、エリアス先生、Sクラスの仲間たち、そして公爵家の影の精鋭たちだ。
お兄様が卓上の地図を叩き、鋭い眼光で指し示す。
「昨夜の痕跡を解析した結果、敵の潜伏先が特定された。学園の旧地下大空洞――かつて古代魔導都市の跡地として封印された暗黒領域だ。奴らは今夜、学園都市全体の魔力脈をジャックし、古代魔導兵器を起動させるつもりだ!」
「旧地下大空洞……! そんな場所に潜んでいたなんて」
エレナさんが息を呑む。ライアン君も剣の柄を握り締め、静かに闘志を燃やしていた。
「敵の狙いがオリカの術式構造である以上、奴らはオリカを誘い出すために学園全体を人質に取る構えです」
エリアス先生が静かに補足する。その言葉を受け、お兄様が私の前に立ち、深く力強く私の肩に手を置いた。
「オリカ。本当ならお前を安全な本邸へ避難させたい。……だが、お前はもう『護られるだけの妹』ではないのだろう?」
「……お兄様」
「お前が仲間と共に掴み取った力で、その大切な日常を守りたいと言うのなら……兄として、全力でお前を支える! 好きに暴れてこい!」
「アレクシス様、過保護な本術を隠し切れておりませんよ」とエリアス先生がクスリと笑うが、その表情には揺るぎない信頼が浮かんでいた。
「ガウッ!」
ノワールが私の隣で胸を張り、力強く遠吠えをあげる。
「お兄様……先生……みんな。ありがとうございます!」
私は胸の前で、真新しい束の魔導紙を強く抱きしめた。
前世では病室のベッドで一人、折った紙を見つめるだけだった私が、今こんなにも頼もしい家族と最高の大切な仲間に囲まれている。
「私の折り紙魔法で……みんなの居場所を絶対に守ってみせます!」
決戦の夜が、静かに訪れようとしていた。




