第184話:絶対の甲羅と、芽生えた確信
「オリカ様……っ!?」
エリアス先生が差し伸べた手よりも速く、黒い魔力の槍が私の目前まで迫る。
(間に合わない――!)
私が目をつむりかけた、その刹那。
パキンッ!!
甲高い透明な打撃音が資料室内に響き渡った。
私のすぐ隣に滑り込んできたライアン君と、その横で杖を突き出したエレナさん。
二人が胸元から取り出した『緑色の折り紙の亀』が激しい光を放ち、二人の全身を包み込むように重厚な幾何学の甲羅結界を展開していたのだ。
ふたりは身を挺して私の前に割り込み、黒い槍の突撃を完璧に弾き返していた。
「へへ……言ったろ、オリカ。守られてばかりじゃ友達失格だってな!」
「任せてって言ったでしょ! オリカちゃんの亀、バッチリ効いたわ!」
衝撃波で髪を揺らしながら、ライアン君とエレナさんが振り返って力強く笑ってみせる。
「二人とも……! 私の亀を……!」
「ガウゥッ!!」
間髪入れず、ノワールが鋭い跳躍を見せた。
弾き返されて空中で体勢を崩した黒い魔力の束へ、漆黒の爪を一閃させる。
ズドンッ!!
聖獣の威光を纏った一撃が黒い塊を粉砕し、不気味な遠隔伝達器官は跡形もなく消滅した。
静けさを取り戻した資料室で、エリアス先生が感心したように眼鏡の位置を直す。
「素晴らしい連携です……。オリカ様の『絶対耐久』を組み込んだ付与魔術、そしてそれを見事に使いこなしたお二人の勇気。見事でした」
「ええ……! ふたりとも、本当にありがとう……!」
胸の奥から湧き上がる温かい感情。
私は二人から受け取った勇気と、自分の手の中に残る魔導紙の感触を確かめるように、強く握りしめた。
(私の折り紙魔法は、誰かを傷つけるためのものじゃない。こうして大切な友達を守り、みんなと繋がるための力なんだ……!)
黒幕が何を狙っていようと関係ない。
お兄様、エリアス先生、ノワール、そしてかけがえのない仲間たち。
この温かな居場所を守るため、私は自分の魔法をさらに上の段階へと進化させる決意を固めた。




