第183話:迫る古代の影と、張り巡らされる網
「私の折り紙魔法が……狙われている……?」
エリアス先生の言葉が、静かな資料室に重く響く。
「ええ。オリカ様が考案された『折り目とジョイントによる魔力循環』および『絶対耐久』の術式構造は、失われた古代魔導の核心と酷似しているのです。奴らはその高度な空間・結界理論を奪い、封印された古代兵器を完全起動させようとしているのでしょう」
エリアス先生は静かに語りながら、鋭い視線で部屋の隅々を警戒している。
「そんな……オリカちゃんの魔法を悪用しようだなんて……!」
エレナさんが悔しそうに杖を強く握りしめ、ライアン君も不快そうに眉をひそめた。
「許せねえな。オリカがみんなを守るために一生懸命考えた魔法だぞ」
「エレナさん、ライアン君……」
二人の怒りと優しさに胸が熱くなる。
前世では病室でただ紙を折ることしかできなかった私が、この世界で手に入れた大切な力。
誰かを傷つけるために利用されるなんて、絶対に嫌だ。
「ガウッ!」
ノワールが私の前に立ち、頼もしく胸を張る。
「お前は俺が守る」と言っているかのように、その瞳には力強い光が宿っていた。
「ご安心ください、オリカ様。既にアレクシス様率いる生徒会および公爵家の影が、学園都市全域の検問と防衛線の再構築に動いております。奴らに好き勝手はさせません」
エリアス先生が優しく微笑み、私たちの不安を和らげるように頷いてくれた。
――しかし、その時だった。
部屋の壁にこびりついていた黒い魔力痕跡が、突如として不気味な泡を立て、怪しく蠢き始めたのだ。
『……見……ツ……ケ……タ……』
空間そのものが軋むような、不快な掠れ声が資料室内に響き渡る。
「くっ、残留魔力に仕込まれた遠隔の伝達器官か……! 全員、下がってください!」
エリアス先生が瞬時に前に出ようとした、その瞬間――。
黒い魔力の束が鋭い槍となって、一直線に私の胸元へと放たれた!




