第181話:守るための亀と、かけがえのない絆
旧校舎へと続く固く閉ざされた扉を背に、冷たい夕風が廊下を吹き抜ける。
私はポケットから二つの小さな折り紙を取り出し、そっと手のひらに載せた。
それは、重厚な甲羅の模様をあしらった、緑色の「折り紙の亀」だった。
「エレナさん、ライアン君……これ、持っていてくれませんか?」
「え? 折り紙の……亀?」
受け取った二人が不思議そうに首を傾げるのを見て、私はまっすぐに二人の目を見つめた。
「……お兄様たちが厳重に警戒していることや、さっきの不気味な残留魔力……やっぱり、何かが起きようとしているんだと思います。そして、もしかしたら……私を狙っているのかもしれない」
「オリカちゃん、それは――」
「お二人には、いつも本当に親しくしてもらっていて……すごく嬉しいんです。でも……私の近くにいることで、二人まで危険に巻き込まれてしまうかもしれない。それが、すごく怖くて……」
前世の病室でずっと一人だった私に、あたたかい居場所をくれた大切な友達。
二人を絶対に傷つけたくないという思いが、胸の奥から溢れ出してくる。
「この亀には、私の絶対耐久の魔力を組み込んであります。もし二人が予期せぬ攻撃を受けた瞬間、自動で『絶対防御の甲羅結界』が展開して、あらゆる衝撃から守ってくれるように作りました」
「オリカ……」
ライアン君が手のひらの上の小さな亀を見つめ、静かに息を吐いた。
そして、フッと柔らかい笑みを浮かべると、その亀を大事そうに制服の胸ポケットへと仕舞い込んだ。
「受け取るよ、オリカ。……でもな」
ライアン君は自分の腰の剣を軽く叩き、力強く言葉を続けた。
「俺たちが君と一緒にいるのは、巻き込まれてるからじゃない。俺たちが、オリカの友達でいたいからここにいるんだ」
「そうよ、オリカちゃん!」
エレナさんも胸の前でしっかりと亀を握りしめ、優しく微笑んで私の手を包み込んでくれた。
「守られてばかりじゃ、友達失格でしょ? 危険だからって離れるくらいなら、最初から一緒に戦うわ! でも……このお守りは、オリカちゃんの優しさとして大切に持っておくね」
「二人とも……っ」
二人のあたたかい言葉に、視界がじんわりと滲む。
「ガウッ!」
足元のノワールも「いい仲間を持ったな」と言わんばかりに、私の足に優しく体を擦り寄せてきた。
「……はい! ありがとう、二人とも!」
渡した『折り紙の亀』と、交わした強い絆。
忍び寄る闇の気配を前に、私たちの心はしっかりと一つに結ばれていた。




