第16話:ツンデレ(?)少年、神話級おもちゃに敗北する
たくさんの貴族たちから、
「可愛い」「天使だ」と
ちやほやされまくっていたお茶会。
私はパパ(ギルバート)の腕から
絨毯を敷いた芝生の上へと
おろしてもらい、
お気に入りの木馬(絶対障壁つき)を
紐で引いて、トコトコと遊んでいた。
そんな私の前に、
一人のきらびやかな衣装を着た、
7歳くらいの少年貴族が歩み寄ってきた。
その少年は、ツンとすました顔で
私を上から見下ろしてくる。
「ふん。君がエヴェレット公爵家のオリカかい?
ずいぶん大げさに騒がれているけれど、
所詮は魔力5の生活魔法使いなんだろう?
僕なんて、7歳にしてすでに魔力『100』に
達している『神童』って呼ばれているんだからね」
(うわぁ、めっちゃ絵に描いたような
生意気エリート系お坊ちゃんが来たわ……)
私は心の中で引きつつも、
「ばぶー?」と首を傾げて、
ただの無害な1歳児のフリをした。
少年は、期待したような「神童への憧れ」の反応ではなく、
ただのポカンとした幼児のリアクションしか返ってこないのが
気に入らなかったのか、
さらにマウントを取ろうと
私の引いている木馬を指差した。
「なんだいその古臭い木馬は。
公爵家の令嬢のくせに、
そんな地味なおもちゃで遊んでいるのかい?
ちょっと僕に見せてごらん」
少年はそう言うと、
私の手から紐を奪い取り、
木製のお馬さんに直接手を触れた。
――その瞬間だった。
カチリ、と
小さな起動音が鳴り響いた。
(※少年が紐を奪い取った動きが、
おもちゃの防衛システムに『害意あり』と
判定されてしまったらしい)
ピキィィィン!!
少年の指先が木馬に触れた途端、
おもちゃから、目に見えないほどの
超・高密度な魔力(絶対障壁)の波動が
一瞬だけ、少年の体へと逆流した。
「……っひゃあ!?」
少年は、まるで静電気のオバケに
感電したかのように、
その場で飛び上がって尻もちをついた。
少年の顔から、みるみる血の気が引いていく。
「な、ななな、何だ、今の……!?
僕の全身の魔力が、一瞬で
完全に押さえつけられたような……。
い、いや、このチビの持っているおもちゃから、
宮廷魔導師様でも見たことがないような
とんでもない防衛結界の気配が……っ!!」
少年は、カタカタと小刻みに震えながら、
私と、私の木馬を交互に見て絶叫した。
(あちゃーーー! だから言わんこっちゃない。
それ、国家防衛レベルの
ウルトラチートおもちゃだから、
一般人がうかつに手を触れると
魂がビビっちゃうのよね……)
私が心の中で呆れていると、
異変を察知したお兄様が
すさまじい速度で私たちの間に割って入った。
「……僕のオリカに、何か用かな?」
お兄様の瞳は冷たく澄み渡り、
その全身からは、少年の『魔力100』なんて
一瞬で塵にするほどの、圧倒的な
強者のプレッシャー(威圧)が放たれている。
「ひ、ひぃぃぃっ! な、何でもないですっ!
し、失礼しましたーーーっ!!」
少年は涙目になりながら、
自分のプライドを木端微塵に砕かれ、
尻もちをついたまま全力で逃げていった。
「オリカ、怪我はないかい?
……ふん、あんな小物に、
世界の精霊たちも怒って結界を張ったんだね。
当然の報いだよ」
お兄様はそう言って、
私を優しく抱き上げると、
誇らしげに木馬の頭を撫でた。
(お兄様、威圧で少年の心を完全に折った上に、
また精霊のせいにしてるよ……!)
自称・神童の少年を
おもちゃの結界だけで完膚なきまでに
撃退してしまい、
私の「触るな危険」な隠密お茶会は
こうして幕を閉じるのであった。




