第177話:お土産のケーキと、影の護衛たち
「はい、これお兄様とノワールの分です!」
カフェを出た私は、物陰に隠れていた(つもりになっている)お兄様とノワールのもとへ駆け寄り、丁寧に包んでもらった箱を差し出した。
「お、オリカ……!? なぜ私がここにいると……いや、私としたことが、完璧な隠密行動だったはずなのに!」
ハンカチで額の汗を拭いながら狼狽するお兄様と、ばつが悪そうに「くぅん……」と情けない声を出すノワール。
「ふふ、二人とも目立ちすぎていますよ。街の人たちもみんな見ていましたから」
私がクスクスと笑うと、お兄様は咳払いをして真面目な顔を取り繕った。
「いや、これはだな……学園の生徒会長として、街の治安維持に問題がないか視察していたのだ! 決して可愛い妹のデート――いや、友人との外出を心配して尾行していたわけではない!」
「デートだなんて……ただの演習の打ち上げですよ」
「そうですよ、アレクシス様。あまりオリカ様を困らせるものではありません」
突如として背後から聞き覚えのある落ち着いた声が響き、エリアス先生がすっと姿を現した。
「エリアス先生!? どうしてここに……」
「ふふ、私は公爵夫妻から『オリカ様に怪しい虫がつかないよう厳重に監視せよ』との厳命を受けておりますので。アレクシス様の少々大雑把な尾行のフォローも兼ねております」
「お前も尾行していたのではないか!!」
お兄様とエリアス先生がいつもの調子で不毛な押し問答を始める。
(みんな、私のことをどれだけ過保護に心配してくれているんだろう……)
呆れつつも、胸の奥がじんわりと温かくなる。
前世の病室では決して味わえなかった、賑やかで温かい家族の存在。
ノワールはお土産のケーキの匂いをくんくんと嗅ぎ、嬉しそうに私の手元に頭を擦り寄せてきた。
「あはは、ノワール、ケーキは帰ってからみんなで食べようね」
「ガウッ!」
賑やかな休日が過ぎていく。
この平和で愛おしい時間を、私はこれからも折り紙魔法で守り抜いていこうと、心の中で静かに誓うのだった。




