第173話:演習開幕と、張り巡らされる防衛線
広大な演習場に、緊張感に満ちたホイッスルが響き渡った。
「『学園定期魔導演習』、開始! 押し寄せる魔導人形の群れから、各クラスの拠点を防衛せよ!」
教官の宣言と同時に、演習場の奥から大量の魔導ゴーレムが出現し、地鳴りを立てて進軍を始める。
「来たわ……! 凄い数……!」
エレナさんが杖を構え、汗を拭う。
Sクラスに割り当てられた拠点は、演習場の中央にある高台だ。敵の標的になりやすい分、防御の難易度は最も高い。
「みんな、落ち着いて配置についてください! 私がまず、第一防衛線を構築します!」
私は胸の前で魔導紙の束を構え、一気に空へと放ち投げた。
数十枚の紙が折り合わさった幾何学パーツとなり、高台の周囲へと四方に飛び散っていく。それらは着地と同時に互いの折り目をガチリと噛み合わせ、美しい多面的構造へと組み上がった。
「展開――『折り紙結界・千紙陣』!」
カッと眩い光が走り、高台全体を包み込むように、無数の紙が織りなす強固な幾何学模様の魔力障壁が広がった。
ドォンッ!!
先頭を走ってきた大型ゴーレムの拳が結界に衝突する。
だが、衝撃は噛み合わさったパーツの回路を通して結界全体へ瞬時に分散され、高台は揺らぎすらしない。
「なっ……何だこの防衛陣は!? ゴーレムの突撃を完璧に殺しているぞ!?」
「衝撃が完全に分散されてる……!? 従来の魔法障壁とは構造がまるで違う!」
監視台から見ていた上級生や教官たちから、驚愕の声が上がる。
「すごいわ、オリカちゃん! 全然攻撃が届かない!」
「よし、これなら安心して後ろから攻撃に専念できるぞ! 『疾風波』!」
ライアン君の剣撃とエレナさんの炎魔法が、結界の内側から安全に放たれ、身動きの取れないゴーレムたちを次々と破壊していく。
完璧な絶対防御と、内側からの自由な反撃。
エリアス先生のアドバイスで完成した『千紙陣』は、Sクラスの拠点を揺るぎない要塞へと変えていた。
――その光景を、本部テントの最前列で見ていたお兄様が、周囲の迷惑も顧みずに身を乗り出す。
「見たか! あれが私の妹、オリカの真の力だ!! 天才! 偉大! 完璧な美しさだ!!」
「アレクシス生徒会長、観覧席で暴れないでください……!」
教官の制止も耳に入らないお兄様の歓声に見守られながら、私たちの防衛戦は完璧な滑り出しを見せるのだった。




