第169話:影の護衛と、届いた重圧(愛)
実家へ手紙を出してから数日後の放課後。
私は図書室からの帰り道、学園の敷地内にある
静かな庭園の木陰を歩いていた。
ふと、後ろの茂みがガサリと揺れる。
(えっ……まさか、また魔物……!?)
身構えてポケットの魔導紙に手を伸ばした私だったけれど、
茂みからひょっこりと顔を出した“それ”を見て、思わず目が点になった。
「……ノワール!???」
そこにいたのは、漆黒の美しい毛並みを誇る我が家の聖獣――ノワールだった。
「ガウッ!」
嬉しそうに尻尾を振って駆け寄ってくるノワールを、
私は慌てて抱きしめつつ、周囲をキョロキョロと見回す。
「どうしてここに!? お父様たちと一緒に屋敷にいたはずじゃ……」
ノワールは「ふぅ……」と呆れたように息を吐くと、
首輪にくくりつけられていた小さな手紙を差し出してきた。
手紙を開くと、そこにはお父様とお母様の、
溢れんばかり(というか溢れすぎて重い)文字が躍っていた。
『愛するオリカへ。
実習での危機を知り、お父様とお母様は肝が冷える思いだった。
学園側には厳重に抗議し、警備体制を強化させた。
だがそれでも心配なので、ノワールを護衛として送る。
学園の敷地内では陰からお前を見守らせるので、どうか安心しておくれ』
「あ、抗議……!? 警備体制の強化……!?」
頭を抱える私。
どうやら私が控えめに書いた手紙の裏で、
エリアス先生かお兄様経由で詳細が伝わってしまったらしい。
(だから今日、学園の警備兵さんの数が急に増えていたのね……!)
さらに手紙の最後には、
『追伸:学園の隣の土地を買い取り、エヴェレット家の警備拠点を建設予定だ』
と恐ろしい一文が添えられていた。
「お父様、お母様……いくらなんでも過保護すぎます……!」
「くぅ〜ん……」
ノワールも「本当にな」と言いたげに小さく鳴いて、
私の膝に擦り寄ってくる。
「でも、ノワールが来てくれたのはすごく嬉しいよ。ありがとうね」
頭を撫でてあげると、ノワールは気持ちよさそうに目を細めた。
過保護すぎる両親の暴走に頭を痛めつつも、
膝の上の温もりと頼もしい相棒の存在に、
私はふっと心を和ませるのだった。




