第167話:実習の余波と、広がる信頼
実習を終え、安全な訓練場へと戻ってきた私たちは、
まず教官から深々と頭を下げられることになった。
「危険度の高い魔物の侵入を見落とし、
新入生である君たちを危険に晒してしまった。本当に申し訳ない。
……そして、冷静な判断で時間を稼ぎ、
パーティ全員を無傷で守り切ったオリカ・エヴェレット生徒。
君の見事な防衛行動に、心からの敬意を表する」
「いいえ、先生。みんなが無事で本当によかったです」
教官の言葉に、周囲の新入生たちからもどよめきが上がる。
「あの状況で全員をかばいきるなんて……」
「デコイで敵を翻弄して、絶対耐久の紙で防いだんだろ? すごすぎるよ」
「やっぱりSクラスのオリカ様は格が違うな……」
実技測定の時に続いて、今回の件で私の『折り紙魔法』が
単なる珍しい魔法ではなく、実戦でも極めて強力な
防衛・戦術魔法であると、学園全体に広く知れ渡ることとなった。
――ちなみに、お兄様はというと。
「まったく、アレクシス生徒会長!
いくら妹君の危機とはいえ、許可なく実習区域に突入し、
魔物を跡形もなく消し飛ばすとはやりすぎです!」
「ふん! 妹の安全以上に優先される許可などこの世に存在しない!
もしオリカの髪の毛一本でも傷ついていたら、
私はあの森ごと更地にしていたところだ!」
教官からこっぴどく叱られながらも、
全く反省した様子のないお兄様。
その過保護っぷりには、呆れを通り越してみんな苦笑いするしかなかった。
◇
その日の夕方、寮の自室に戻った私は、
机に向かって実習の報告と近況を綴った手紙を書いていた。
『お父様、お母様、エリアス先生。
今日の実習で少し驚くような出来事がありましたが、
お兄様と先生方が助けてくださり、無事に乗り越えることができました。
私の折り紙魔法も、みんなの役に立っているようです。
ノワール、そっちは元気にしていますか?』
手紙を書き終え、ふっと窓の外を見上げる。
夕日に染まる学園の景色はとても美しく、暖かい。
「お父様もお母様も、きっとこれを見たらまた大騒ぎしちゃうかな……」
くすりと小さく笑いを漏らしながら、
私は手紙を封筒に納め、優しく微笑むのだった。




