第166話:屋外実習と、迫る脅威
学園生活にもすっかり慣れてきた頃。
今日の講義は、学園の敷地裏に広がる『魔導の森』での
実地演習と魔物追跡のシミュレーションだった。
「今回の実習は4人1組のパーティ単位で行う。
指定のエリア内に配置された標的を発見し、
確保することが課題だ。無理はせず、危険を感じたらすぐ合図を送るように!」
担当教官の指示とともに、私たちは森の中へと足を踏み入れる。
私のパーティは、エレナさん、剣術に長けたライアン君、
そして回復・支援魔法が得意なミリアちゃんの4人組だ。
「オリカちゃん、索敵をお願いしてもいいかしら?」
「はい、お任せください!」
私は即座に三羽の『魔導紙のカエル』を折り上げ、森の茂みへと放つ。
カエルたちはぴょんぴょんと跳び回り、
私の視界と魔力感覚に周囲のリアルタイムな状況を伝えてくれた。
カエルによる正確な索敵のおかげで、
私たちは順調に課題の標的へと接近していた。
――だが、指定エリアの手前で、カエルの一羽から
急激な緊張感を伝える魔力反応が返ってきた。
「……! みんな、止まってください!」
私が叫ぶと同時に、頭上の大樹からドスンと重い影が舞い降りてきた。
それは演習用の標的などではなく、森の深部から迷い込んできたと思われる
中型肉食魔物『ワイルド・ベア』だった。
本来なら上級生が対処するレベルの魔物だ。
新入生の私たちが正面から戦うには、あきらかに荷が勝ちすぎている。
「な、なんでこんな浅い場所に……!?」
鋭い爪を立てて威嚇する魔物を前に、ミリアちゃんが足をつくばませる。
「みんな、落ち着いてください! 私が時間を稼ぎます!」
私は懐から『魔導紙のカエル』と『折り鶴』を取り出し、前方へ投げ放った。
「跳んで――『多重デコイ』!」
パンッ!と跳ね回るカエルたちが、私と同じ魔力波長を四方八方に拡散させる。
ワイルド・ベアは困惑し、空を切って腕を振り回した。
さらに、襲いかかろうとする巨大な爪の前に、
絶対耐久を付与した『魔導紙の折り鶴』を差し出す。
ガキィィンッ!!
強烈な一撃を受け止めながらも、折り鶴は傷一つつかない。
完璧な防壁とデコイで、私は仲間を後ろにかばいながら、
完全に魔物の足止めに成功していた。
(よし、時間は稼げてる! あとは先生たちが気づいてくれれば……!)
そう思った次の瞬間――。
「オリカーーーーッ!! 兄が来たぞぉぉぉッ!!」
森の木々を薙ぎ倒さんばかりの勢いで、
金髪をなびかせた影と、青ざめた表情の教官が突風とともに飛び出してきた!
「我が天使に害なす愚者め! 塵となれ!!」
お兄様の怒りの一閃が閃光となって奔流し、
ワイルド・ベアを一瞬で吹き飛ばして蒸発させた。
「……え」
あまりの瞬殺ぶりに、ポカンと口を開けてしまう私たち。
「オリカ! 無事か!? どこも怪我はないか!?」
私の肩を掴んでぶんぶん揺さぶるお兄様と、
「はぁ、はぁ……教官の私が追いつけないほどの速度で走るなんて……」と
膝に手をついて息を切らす教官。
「あ、あの……お兄様、私は折り紙の防御で無傷です……!」
「そうか! よかった……! 妹の危機とあらば、
生徒会の執務室からでも飛んでくるのが兄の義務だ!」
呆れつつも安堵するエレナさんたちの視線を受けながら、
過保護すぎるお兄様の愛に救われた(?)実習となったのだった。




