第163話:跳ねる蛙と、書き換わる評価
圧倒的な耐久性能を見せた折り鶴に、
訓練場全体が静まり返っていた。
だが、私の実技測定はこれだけでは終わらない。
「先生、続いて撹乱およびデコイ(囮)性能の測定をお願いできますでしょうか」
「あ、あぁ……許可する。ゴーレム、追撃モード稼働!」
教師の動揺混じりの指示に応じ、
ゴーレムの赤い眼光が再び鋭く発光する。
私は懐から事前に折り上げておいた
数羽の『魔導紙のカエル』を取り出し、地面へと放った。
「――跳んで」
魔力を通した瞬間、紙のカエルたちが
生きている蛙のようにピョンピョンと跳ね回る。
それと同時に、それぞれのカエルから
私とまったく同じ魔力波長が拡散された。
「……ッ!? 魔力反応が分散された!?」
ゴーレムの索敵機能が混乱を起こし、
巨大な腕が空を切って明後日の方向へと振り下ろされる。
カエルたちは軽快にその攻撃を回避しながら、
縦横無尽に訓練場を駆け巡った。
『な、なんだあの動きは……!』
『魔力反応が本物と区別できない……!?』
カエルの引きつける隙に、私は空中を舞う折り鶴を
ゴーレムのコア目掛けて一直線に一閃させた。
ドカァンッ!!
絶対耐久を纏った折り鶴の突撃を受け、
巨大なゴーレムの核は綺麗に撃ち抜かれ、
巨体がガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
完全な無傷での勝利。
「……測定終了!
オリカ・エヴェレット……実技評価、S!」
教師の宣言が響き渡ると同時に、
クラスメイトたちからドッと大きな歓声が上がった。
「すげえ……紙の遊戯なんて思って悪かったよ!」
「防御だけじゃなくて、索敵撹乱に攻撃まで完結してるなんて……!」
さきほどまでの疑問や不審の目は消え去り、
尊敬と驚嘆の眼差しが私に降り注ぐ。
(よかった……エリアス先生と特訓してきた成果が、
ちゃんと形になって伝わったんだ)
ほっと胸を撫で下ろしたその時――。
「さすがは私の天使!! 素晴らしい演武だったぞ、オリカァ!!」
訓練場の柵を飛び越えんばかりの勢いで、
見学に来ていたお兄様が拍手を送りながら乱入してきた。
「お、お兄様!? 生徒会の仕事は……!?」
「妹の晴れ舞台を見る以上の仕事など存在しない!」
呆れつつも温かな笑いを漏らすクラスメイトたちに囲まれながら、
私の学園生活は、最高の形でスタートを切ったのだった。




