第160話:入学式と、小さなざわめき
お兄様が感涙にむせぶ姿を何とか宥め、
生徒会の仕事へとお戻りいただいた後。
私は案内された大講堂へと向かい、
新入生が一堂に会する入学式へと臨んでいた。
壇上では学園長がありがたいお話をされているけれど、
周囲の視線がちらちらと私へ注がれているのを感じる。
(さっきのお兄様との派手な再会、
やっぱり目立っちゃったなぁ……)
周囲からの好奇の眼差しに、
私は少しだけ肩をすぼめた。
前世での病室暮らしを思えば、
こうして多くの同年代に囲まれていること自体が
夢のようでもあり、少し気恥ずかしくもある。
入学式が終わり、次は各組へのクラス発表だ。
掲示板の前に人集りができる中、
背の低い私は少し爪先立ちになりながら名簿を探す。
「ええと……私の名前は……」
『Sクラス オリカ・エヴェレット』
最上位クラスであるSクラスの筆頭に、
しっかりと私の名前が刻まれていた。
「あの子……エヴェレット公爵家のお嬢様よね?」
「噂だと、一風変わった魔導具をつくるって……」
「アレクシス様の妹君でしょ? すごい可愛い……」
周囲からひそひそと囁き声が聞こえてくる。
(Sクラス……!
エリアス先生と重ねてきた特訓の成果を、
ここでしっかりと発揮しなきゃ)
胸に手を当て、そっと深呼吸をする。
社交界での立ち回り、そして誰にも真似できない
『魔導紙の折り鶴』や『デコイのカエル』。
努力して積み上げてきた自分の魔法に、誇りを持って。
「オリカ・エヴェレット……頑張ります!」
自分の胸にそう言い聞かせながら、
私は緊張と高揚感を胸に、
最初の教室となるSクラスの扉へと向かって
力強く一歩を踏み出すのだった。




