第155話:届いた甘味と、重すぎる愛
クッキーを出荷してから数日後。サロンで紅茶を楽しんでいた私の元に、学園の定期便から一通の『分厚い』封筒が届けられた。
「……オリカ様、ご長男のアレクシス様よりお返事が届きましたよ」
給仕から差し出された封筒を受け取った瞬間、ずっしりとした手応えに思わず固まってしまった。封筒の厚みが、明らかに普通の手紙のそれではない。
「えっ……? これ、手紙……ですよね?」
「ふふ、またアレクシスの『オリカ愛』が爆発したようね」
お母様が楽しそうにクスクスと笑い、お父様も「どれどれ」と嬉しそうに身を乗り出してくる。
封を切ってみると、中から出てきたのは、これでもかとギッシリ文字が書き込まれた――なんと10枚にも及ぶ便箋の山だった。
『親愛なる私の天使、オリカへ!!
手紙とクッキーを受け取った! 寮の部屋で箱を開けた瞬間、あまりの嬉しさに全米……いや、騎士科の同期全員が羨むほどの声を上げてしまったよ!
まさかオリカが私のために、私の顔を模したクッキーを焼いてくれたなんて……! 食べるのが勿体なくて3時間ほど鑑賞し、涙を流しながら一口食べたが、天上の味がした!
お前の成長と優しさが眩しすぎて、兄は毎日学園の訓練場で剣を振るう手が震えるほどだ。
もうすぐお前がこの学園に入学してくると思うと、夜も眠れない。生徒会室も寮も、お前を迎える完璧な環境に整えておいたからね!
(以下、オリカの可愛さとクッキーの美味しさについての考察が7枚続く)……』
「……じ、10枚……全部私への愛とクッキーの感想ですね……」
読み進めるうちに顔が熱くなっていくのを感じながら、私は思わず苦笑いを漏らした。
けれど、遠く離れた学園で一生懸命頑張っているお兄様に、自分の想いがちゃんと届いて心から喜んでもらえたことが、たまらなく嬉しかった。
「くぅ~ん」
便箋の山を不思議そうに鼻先でつつくノワールを撫でながら、私はお兄様への返信を書くために、誇らしげにペンを取るのだった。




