第153話:秘密のサプラーイズと、特別なクッキー
焼き立てのクッキーを乗せたトレイを抱え、私はサロンの重厚な扉をそっと開けた。
お父様とお母様は、いつものように優雅にお茶を楽しんでいたけれど、私とエリアス先生、そして料理長が揃って入ってきたことに少し驚いた様子で顔を上げた。
「オリカ? エリアスも……いったいどうしたのだね?」
「ふふ、お父様、お母様。日頃の感謝を込めて、私からちょっとしたサプラーイズです!」
私がトレイをテーブルの上にそっと置くと、お父様とお母様は目を丸くしてトレイの中を覗き込んだ。
そこには、綺麗なお花や星の形に混ざって――ふたりの特徴をそっくりにとらえた似顔絵クッキーと、愛くるしいノワールの顔のクッキーが誇らしげに並んでいる。
「これは……! お父様とお母様、それにノワールの顔か!?」
「まあ……! なんて可愛らしいクッキーでしょう! オリカ、もしかしてあなたが作ったの?」
「はい! 前世……ううん、生まれて初めてのお菓子作りだったんですけど、料理長やエリアス先生にも手伝ってもらって、一生懸命焼いたんです。お父様とお母様、いつも私を優しく見守ってくれてありがとうございます」
私が照れくさそうに笑って差し出すと、お父様とお母様は感無量といった様子で胸を押さえ、お互いに顔を見合わせた。
「ああ……なんということだ。我が娘がこんなに温かい心を持った良い子に育ってくれて……お父様は嬉しくて涙が出そうだ」
「本当に……食べるのが勿体ないくらい素敵なクッキーね。オリカ、最高のサプライズをありがとう」
「くぅ~ん!」
自分専用のクッキーを見つけたノワールも、待ちきれない様子でしっぽをぶんぶんと振り、私の膝に鼻先を擦り寄せてきた。
「ふふ、ノワールも召し上がれ!」
ノワールが美味しそうにクッキーをはぐはぐと頬張り、お父様とお母様も一口食べては「本当に美味しいよ」「素晴らしい味ね」と笑顔を咲かせる。
家族の温かな笑顔に囲まれて、私の胸はこれ以上ない幸福感と愛おしさで満たされていくのだった。




