第151話:先生の気遣いと、秘密の計画
「ふう……今日の検証はこのくらいにしておきましょうか」
羊皮紙に実験データを書き留めながら、エリアス先生がペンを置いた。
机の上には、幾度もの試作を経て精度が増した折り鶴とカエルの魔道具が、綺麗に整列している。
「お疲れ様でした、エリアス先生。先生のおかげで、かなり納得のいく形になってきました!」
「オリカ様が熱心に取り組んでくださった成果ですよ。……ですが、ここ最近は社交の準備から魔道具の研究まで、少し根を詰めすぎているように見受けられます」
エリアス先生はメガネの縁を押し上げながら、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「ですのでオリカ様、明日は講義も研究もお休みにいたしましょう。羽を休める日にしてください」
「えっ、お休みに……?」
思いがけない提案に目を丸くする私に、足元のノワールも「くぅ?」と首をかしげて見上げる。
「ええ。根を詰めすぎては良い発想も生まれにくくなりますからね。明日はご自身の好きなように時間をお使いください」
「ふふ、ありがとうございます……! 先生がそう言ってくださるなら、お言葉に甘えようかしら」
手元の魔導紙を片付けながら、私はふと良いアイディアを思いついて手を止めた。
(そういえば……お父様もお母様も、最近私の社交や勉強のことをすごく心配してくれていたっけ。明日お休みなら……)
「ねえ、エリアス先生。明日、家族には内緒で……サプライズで手作りのお菓子を作ってみるのはどうかしら? いつも私を優しく見守ってくれるお父様とお母様を、驚かせて喜ばせたいんです!」
私が目を輝かせて提案すると、エリアス先生は一瞬驚いたように目を見張り、それから嬉しそうに頷いてくれた。
「それは……とても素敵な計画ですね。料理長にも内緒で厨房を借りられるよう、私から手配しておきましょうか?」
「本当ですか!? ありがとうございます、エリアス先生!」
こうして、明日のお休みは「家族に贈る秘密のお菓子作り」という、最高にワクワクする計画に取りかかることになったのだった。




