第146話:指先に宿る意匠と、最初の一羽
正方形に整えられた魔導紙の端と端を、慎重に合わせて指先を滑らせる。
前世で幾度となく折った見慣れた工程だが、今は角を折り込むたび、そして折り目を強くつけるたびに、自分の魔力が紙の繊維に沿って回路のように刻まれていくのが感覚として伝わってきた。
(折り目の一つひとつが、まるで魔法陣の刻印のような役割を果たしている……!)
角を合わせ、三角形からさらに小さく折り畳み、羽と首を丁寧に引き出す。
最後の仕上げに、優しく息を吹き込むようにして胴体に魔力を一気に注ぎ込むと――。
机の上に、一羽の小さく美しい『折り鶴』が完成した。
「ふう……出来ました! エリアス先生、見てください」
私が手のひらに乗せて見せると、ずっと傍らで私の指先の動きを食い入るように観察していたエリアス先生が、驚嘆を含んだ息を吐き出した。
「素晴らしい……。魔導陣を平面に描くのではなく、立体的な『折り構造』そのものを魔力回路として機能させているのですね。これほど緻密で無駄のない魔力構造は見たことがありません」
「ええ。それに、この形には……」
私が意識を集中させ、手のひらの上の折り鶴にわずかな起動魔力を流すと、折り鶴の紙の翼が『ふわり』と小さく羽ばたいた。
そのまま自律して空中に浮き上がり、私の周りを優雅に一回旋してみせる。
「くぅ……!」
足元で見守っていたノワールが、物珍しそうに耳をピンと立て、空中を舞う小さな折り鶴を目で追いかけていた。




