第138話:深まる信頼と、次への足がかり
「クラリッサ様……そう言っていただけて、なんだか救われる思いですわ」
「本当のことですもの! 権力を盾に他者を従わせようとするやり方は、今の時代にはそぐいませんわ。少なくとも私や我が男爵家は、オリカ様のその気品と強いお心を心から支持しておりますの」
クラリッサ様は力強く頷き、私の手を優しく包み込んでくれた。
伝統ある伯爵家でありながら控えめで温かなクロエ様と、新興貴族らしく自由で先進的な感覚を持つクラリッサ様。性格も置かれた立場も違うけれど、二人とも私に対して誠実に接してくれる大切な友人だ。
「心強いお言葉、本当にありがとうございます。私、クラリッサ様とお話しできて本当によかったです」
「私こそですわ、オリカ様! 今後ともぜひ、良き友人としてお付き合いくださいませね」
お互いに笑みを交わし、和やかな時間はお茶会の終わりまで続いた。
帰り際、馬車へ乗り込む前にエリアス先生がクラリッサ様へ静かに深々と一礼を捧げた。
「クラリッサ様、本日はオリカ様のために素晴らしいおもてなしと、貴重なお話をありがとうございました。当家としても、ガルニエ男爵家との良きご縁を大変喜ばしく思っております」
「まあ……! エリアス先生、こちらこそ光栄ですわ。オリカ様、またぜひサロンへお越しくださいね!」
手を振るクラリッサ様に見送られながら、馬車は静かに走り出した。
車内で私は窓の外を眺めながら、膝の上のノワールを静かに撫でた。
「エリアス先生。新興貴族の方々の中にも、あんなに心強い考えを持った方がいらっしゃるのですね」
「ええ。グランベル家が強権的な手段に頼るほど、時代の流れに敏感な者や、真の品格を見極められる者たちは我が家に寄せられていきます。オリカ様がご自身の誇りを保ち続けることが、そのまま最大の対抗策となっているのですよ」
先生の言葉に、私は力強く頷いた。
社交界という新しい世界で、私の歩むべき道が少しずつ、けれど確かに見え始めていた。




