第137話:広がる交流と、クラリッサの提案
クラリッサ様が自ら淹れてくださったお茶は、澄んだ香りと爽やかな渋みがあり、喉を通ると心地よい余韻が残った。
「とても美味しいです、クラリッサ様。お茶の美味しさはもちろんですが、おもてなしの温もりが伝わってまいります」
「あぁ、オリカ様にそう言っていただけるなんて……! 本当に嬉しいですわ!」
クラリッサ様は心の底から安堵したように微笑み、それから目を輝かせて語り始めた。
「実は、オリカ様にお見せしたいものが他にもございますの。我が家が北方から取り寄せております、新しい織物や刺繍の図案なのですが……もしよろしければ、ご覧になっていただけますか?」
「ええ、ぜひ拝見したいです」
クラリッサ様が合図を出すと、侍女が美しい錦織や繊細なレース、色鮮やかな糸で描かれた図案の数々を運んできた。
伝統的な公爵家のコレクションとは一味違う、現代的で自由な発想のデザインに、私も思わず身を乗り出す。
「まあ……こちらの花の刺繍、とても立体的で綺麗ですね」
「お目に留まりましたか! これは北方の職人が新しく開発した手法でして。もしオリカ様がお気に召すようでしたら、この生地で小さなお品を仕立ててお贈りさせてくださいな」
「まあ、そんな……お気持ちだけで十分ですわ」
「いいえ! オリカ様のような洗練されたお方に身につけていただけたら、それだけで私どもの光栄ですの」
屈託のない笑顔で語るクラリッサ様。新興貴族らしい積極性と、純粋な情熱に満ちた彼女との会話は時間を忘れるほど楽しく、お茶会は最後まで和やかな熱気に包まれていた。
帰り際、馬車へ乗り込む私に、クラリッサ様は深く頭を下げて見送ってくれた。
「本日は本当にありがとうございました、オリカ様。今度はぜひ、オリカ様のお気に召す最新の図案を揃えておきますわね!」
「ええ、楽しみに過ごしております。クラリッサ様も、ぜひエヴェレット家のお屋敷へ遊びにいらしてください」
馬車が静かに走り出すと、私は隣に腰かけたエリアス先生に向き直った。
「先生、クラリッサ様のお茶会も本当に素敵でしたね」
「ええ。伝統に縛られない新しい感性と、確かな先見性の双方をお持ちの素晴らしい令嬢でした。交流を深めることは、オリカ様にとっても良い刺激となるでしょう」
窓の外の景色を見つめながら、私は社交界の広がりと、そこに咲く様々な人々の魅力に、あらためて胸を躍らせるのだった。




