第135話:ガルニエ邸のサロンと、流行の最先端
数日後、私たちはガルニエ男爵邸へと足を運んでいた。
新興貴族らしく、邸宅は伝統的な重厚さよりも洗練されたモダンな意匠が凝らされている。案内された応接室には、色鮮やかな生地の見本や最新の海外の調度品が飾られ、まるでサロンのような華やかさだった。
「まあ! ようこそお越しくださいました、オリカ様!」
私たちを迎えてくれたのは、華麗なフリルのついた最新仕立てのドレスに身を包んだ、明るい栗色の髪の少女――クラリッサ・フォン・ガルニエ男爵令嬢だった。
「お招きいただきありがとうございます、クラリッサ様。本日はお会いできて光栄です」
私が丁寧なカテシーを捧げると、クラリッサ様は目を輝かせて拍手を送ってきた。
「素敵……! 完璧なお作法ですわ! 昨夜の夜会でのあのドレス、そして洗練された立ち振る舞い……私、ひと目でオリカ様のファンになってしまいましたの!」
彼女の飾らない情熱的な態度に、私の緊張もすっと解けていく。
「ありがとうございます。クラリッサ様のこのお部屋も、とてもセンスが良くて素晴らしいですね」
「おわかりになりますか!? これは北方から新しく輸入された織物でして……あ、そちらの立派な狼様が噂のノワール様ですね? そして、大変気品あふれる雰囲気を纏われた家庭教師様も……!」
クラリッサ様の鋭い視線がノワールとエリアス先生に向けられる。新興貴族の令嬢らしい観察力の鋭さに、エリアス先生も静かに一礼を返した。
「エヴェレット公爵家令嬢オリカ様の家庭教師、エリアス・ハートと申します。本日はお招きいただき恐縮です」
「こちらこそ! さあオリカ様、本日は新しいお茶の淹れ方と、流行の刺繍についてたくさん語り合いましょう!」
クロエ様のお茶会とはまた一味違う、活気あふれる賑やかなお茶会が幕を開けたのだった。




