第132話:誓いと、次への一歩
「クロエ様、今日はお招きいただき本当にありがとうございました。とても楽しくて、素敵な時間でした」
「私の方こそ、オリカ様とお話しできて幸せでした。……あの、またお茶会にお誘いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです! 今度はぜひ、エヴェレット家のお屋敷へ遊びにいらしてくださいね」
私が微笑みながら告げると、クロエ様は花が咲いたような笑顔を見せ、丁寧なカテシーで見送ってくれた。
ローゼンベルグ伯爵邸を後にし、帰りの馬車に揺られる中、私は窓の外を眺めながら小さく息を吐いた。
「グランベル家のこと……お父様にも報告した方がいいですよね?」
「ええ。屋敷に戻り次第、公爵閣下へご報告いたします。ですがオリカ様、過度に心配される必要はありませんよ」
対面に座るエリアス先生が、落ち着いたトーンで言葉を継ぐ。
「公爵家を相手に正面切って挑む度量は、今のグランベル家にはありません。コソコソと周囲に圧力をかける程度が関の山です。オリカ様はただ、ご自身の立ち振る舞いに誇りを持って、社交を楽しまれればよろしいのです」
「……はい! エリアス先生がいてくださると、本当に心強いです」
「それが私の役目ですから」
先生は小さく微笑むと、手元に残った招待状の束に視線を落とした。
「さて、オリカ様。クロエ様との最初のお茶会は大成功でした。次にお会いする令嬢方の吟味も、すでに進めておりますよ」
「ふふ、頼りにしていますね、先生」
膝の上に飛び乗ってきたノワールの柔らかい毛並みを撫でながら、私は次なる社交への決意を新たにするのだった。




