第128話:ローゼンベルグ伯爵邸へ
数日後。返信を送ったのち、私はエリアス先生とノワールを連れてローゼンベルグ伯爵邸へと向かった。
馬車が到着したのは、華美すぎず静麗な佇まいを見せる洋館だった。手入れの行き届いた庭園には色鮮やかな花々が咲き誇り、この家の穏やかな空気感を象徴しているようだ。
「ようこそお越しくださいました、エヴェレット公爵令嬢様」
車門をくぐると、可愛らしい水色のドレスを身に纏った少女が出迎えてくれた。昨夜の夜会で見かけた、あの控えめな雰囲気の金髪の少女――クロエ・フォン・ローゼンベルグ伯爵令嬢だ。
「お招きいただきありがとうございます、クロエ様。本日はお会いできてとても嬉しいです」
私が完璧なカテシーを披露すると、クロエ様はパッと表情を明るくし、ほっと胸を撫で下ろした。
「私の方こそ……! 昨夜の夜会で、あのレオナルド様を相手にあれほど毅然と接されていたオリカ様をお見かけして、ずっとお話ししてみたいと思っていたのです。……あ、そちらの素晴らしい狼様がノワール様ですね?」
クロエ様の視線が、私の隣に佇むノワールへと注がれる。恐怖の色はなく、純粋な憧れと好奇心に満ちた瞳だ。
「ええ、私の大切なパートナーのノワールです。とても賢くて優しい子ですよ」
「まあ……! お噂や肖像画で拝見した通り、本当に気品があふれていて素敵です……!」
クロエ様が目を輝かせると、ノワールも敵意がないことを察したのか、静かに尻尾を一度振ってみせた。
「さあ、庭園に素晴らしいお茶の席をご用意しておりますの。どうぞこちらへ」
緊張していた最初の挨拶が拍子抜けするほど穏やかに終わり、私たちは緑豊かな庭園の東屋へと案内されるのだった。




