第127話:選別と、最初の訪問先
翌日。私室の机には、エリアス先生によって綺麗に分類された手紙が並べられていた。
「オリカ様、差出人の背景と派閥の偏りを考慮し、受諾すべき招待状を三通に絞り込みました」
先生が長い指先で示したのは、特に丁寧な筆致で書かれた手紙だった。
「まず一通目、最も早く返事を出すべきは――クロエ・フォン・ローゼンベルグ伯爵令嬢からのものです」
「ローゼンベルグ伯爵家……」
「ええ。伝統ある中立派の家柄で、過度な派閥争いとは距離を置く潔白な家系です。クロエ様ご自身も読書と刺繍を嗜む落ち着いたお人柄と聞いております。最初の社交相手として、これ以上の選択はありません」
先生の解説は相変わらず的確で、社交界の複雑な人間関係がすっきりと頭に入ってくる。
昨夜の夜会で私に好意的な視線を送っていた、あのおとなしそうな金髪の少女の顔が思い浮かんだ。
「ローゼンベルグ伯爵家なら、純粋にお茶やお話を楽しめそうですね」
「お気持ちは分かりますが、油断は禁物です。社交場である以上、どのような場であれ相手の真意を見極める目が必要となります」
エリアス先生はそう言いながら、眼鏡の奥の瞳をわずかに細めた。
「ですが、ご安心を。相手が純粋な友情を求めているのであれば、オリカ様の素直さと気品があれば何も恐れることはありません。……ノワール、お前も陰からしっかり見守るのですよ」
「くぅん」
足元で丸くなっていたノワールが、任せろと言わんばかりに小さく一声鳴いた。
こうして、私の初めての「同年代とのお茶会」の相手は、ローゼンベルグ伯爵家のクロエ様に決定した。
どのような出会いが待っているのか、胸を躍らせながら返事の執筆を始めるのだった。




