第126話:届いた招待状と、次なるお茶会
カルロス殿下と別れ、無事に必要な買い物を済ませた私たちは、エヴェレット公爵家の屋敷へと戻った。
「お帰りなさいませ、オリカ様。本日の街散策はいかがでしたか?」
出迎えてくれた屋敷の執事へ、私は「とても充実していました」と笑みを返す。横に立つエリアス先生も、何事もなかったかのようにすました顔で小さく頷いていた。路地裏での一件は、先生の手際があまりに良すぎたおかげで、街の人々を巻き込む大騒動にならずに済んだのだった。
自分の部屋に戻り、ノワールの頭を撫でながらソファでひと息ついていると、トントン、とノックの音が響いた。
「オリカ様、失礼いたします。大夜会を終え、早速お客様方からお手紙が届いております」
メイドのセバスが銀のトレーに乗せて運んできたのは、分厚い束になった手紙の山だった。どれも豪華な蝋封が施され、上品な香水の香りが微かに漂っている。
「……こんなにたくさん?」
「はい。昨夜の夜会でのオリカ様の素晴らしいお振る舞いが、同世代の令嬢方の間で大変評判になっております。そのほとんどが、お茶会へのご招待状でございます」
昨夜のデビュー。グランベル家のレオナルドを完璧なマナーとドレスの仕掛けで退けたあの出来事は、どうやら同年代の子供たちの間でも大きな噂になっているらしい。
手紙を数枚手にとってみると、そこには『ぜひエヴェレット公爵家のお嬢様とお友達になりたい』『一緒にお茶やドレスのお話をしたい』といった、同世代の令嬢たちの熱烈なメッセージが綴られていた。
「エリアス先生……これ、どうしましょう?」
家庭教師として部屋に入ってきたエリアス先生に助けを求めると、先生は手紙の束を冷ややかな、けれどどこか頼もしい眼差しで見つめた。
「社交界での繋がりを作る絶好の機会です。ですが、オリカ様をただの物珍しさや利用目的で近付こうとする者も含まれているでしょう。まずは招待主の家柄と人柄を精査し、参加すべきお茶会を吟味いたしましょう」
「はい、よろしくお願いします!」
こうして、街での大冒険を終えた私は、次なる試練――同年代の令嬢たちとの「お茶会社交」へと踏み出していくのだった。




