第125話:お騒がせな一幕の終わりと、新しい約束
「殿下――っ! カルロス殿下ーっ!」
カフェの裏口からけたたましい音が響いた直後、表の扉が勢いよく開かれ、血相を変えた城の護衛騎士たちが飛び込んできた。
彼らが目にしたのは――天井から光の縄でグルグル巻きに吊るされた5人の無法者と、優雅に紅茶のカップに手を伸ばすエリアス先生、そして目をキラキラと輝かせているカルロス殿下の姿だった。
「な、なんだこれは……!?」
「やあ、遅かったね。先生が一瞬で片付けてくれたよ!」
悪びれもせず笑うカルロス殿下に、騎士隊長らしき男性はガックリと肩を落とし、深々と頭を下げた。
「申し訳ございません、殿下……裏手に回っていたネズミどもに気づくのが遅れました。そしてエリアス殿、ご助力に感謝いたします」
「いえ。幸いにもオリカ様と殿下に怪我はありませんでしたので。……ですが、本日の『社会見学』はここまでとさせていただきましょう」
エリアス先生が静かに告げると、カルロス殿下は「えーっ!」と不満そうに声をあげた。
けれど、流石にこれ以上わがままは言えないと悟ったのか、名残惜しそうに私の方を振り返る。
「……そっか。残念だけど、護衛のみんなにも迷惑かけちゃったしね。オリカちゃん、今日は助けてくれて、それに付き合ってくれてありがとう! すごく楽しかったよ!」
「私もです、カルロス殿下。お気を付けてお帰りくださいね」
「うん! あ、そうだ――これ、ぼくの『お礼』!」
カルロス殿下は自分の首元から、綺麗な小ぶりの翡翠があしらわれたペンダントを外すと、私の手にぎゅっと握らせてきた。
「これを持ってれば、城の庭園ならいつでも入れるフリーパスになるから! また絶対、ぼくと遊んでよね!」
「えっ、殿下、そんな大切なものを……!?」
驚く私に「じゃあね!」と眩しい笑顔を残し、カルロス殿下は恐縮しきりの護衛たちに囲まれながら店を去っていった。
(王子のフリーパス……またすごいものを貰っちゃったなぁ……)
手に残るペンダントの温もりを見つめていると、足元でノワールが「くぅん」と小さく鼻を鳴らし、エリアス先生がやれやれと優しく微笑むのだった。




