第122話:路地裏の隠れ家と、不思議なお菓子
カルロス殿下に案内されてやってきたのは、メインストリートの賑わいから数本奥に入った、静かな路地裏に佇む小さなお店だった。
「ここ、ここ! 『星の木陰亭』っていうんだ。表の通りみたいに飾られてないけど、変わった飲み物やお菓子があるんだよ」
木製の重厚な扉をくぐると、店内には香ばしい茶葉と甘い果実の香りが漂っていた。
先客は数人ほどで、それぞれ静かに本を読んだりお茶を楽しんだりしている。王族の少年がふらりと入ってくるとは誰も思っていないようで、店主の穏やかなおじいさんも「いらっしゃい」と優しく声をかけてくれただけだった。
「お二人とも、こちらへどうぞ」
エリアス先生がすばやく店内を見渡し、危険がないか確認してから奥の落ち着いた席へと私たちを促す。
ノワールはその大きな身体をテーブルの横にすっぽりと収め、静かに伏せをした。毛並みが美しすぎるので少し目立つけれど、店主さんは「おや、立派なお供だねぇ」と微笑んでいる。
「オリカちゃん、これ見てよ! この『シュワシュワ果実水』ってやつ、果汁なのに口の中で弾けるんだ!」
「シュワシュワ……炭酸のようなものでしょうか?」
「タンサン? よくわからないけど、飲むとパチパチして面白いんだよ。それと、この『青い実のタルト』も!」
届いたメニュー表を指さしながら、カルロス殿下は目を輝かせて教えてくれる。城の豪華な晩餐会とは違う、街の素朴で新しい体験が本当に楽しいらしい。
「では、カルロス殿下おすすめの果実水とタルトをいただきましょうか。オリカ様、よろしいですか?」
「はい! 私、すごく楽しみです!」
注文を済ませて待っている間、カルロス殿下は肘をついて、興味津々といった様子で私を覗き込んできた。
「ねえオリカちゃん、昨日のドレスの【絶対不壊】って、本当にどんな攻撃も弾くの? どうやって作ったの? 君って実はすごい錬金術師なの?」
質問攻めにしてくる翡翠色の瞳はキラキラと輝いていて、完全に好奇心でいっぱいの男の子の顔だ。
(うーん、どこまで教えていいのかな……?)
私がエリアス先生の方へちらりと視線を送ると、先生は苦笑しながら静かに紅茶のカップへ手を伸ばすのだった。




